現地レポート

つながる絆――オールジャパン2012、閉幕RSS

2012年01月10日 13時54分

昨年、12月23日から始まった日本バスケットボール界最大のイベント、「東日本大震災」被災地復興支援 JX-ENEOSウインターカップ2011 平成23年度第42回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会「東日本大震災」被災地復興支援 第87回天皇杯・第78回皇后杯全日本総合バスケットボール選手権大会が昨日、無事に閉幕しました。


ウインターカップ2011を制したのは男子が宮崎・延岡学園高、女子が北海道・札幌山の手高です。延岡学園高は高校3冠を、札幌山の手高は大会2連覇をそれぞれ達成しました。


オールジャパン2012の男子はトヨタ自動車アルバルクが、女子はJXサンフラワーズが制しています。トヨタ自動車は5年ぶり2回目、JXは4年連続17回目の優勝です。


それら優勝チームを含め、出場してきたすべてのチームに心から敬意を表したいと思います。厳しい練習に耐え、ただひたすらに勝利を目指して、ウインターカップとオールジャパンの舞台を目指して頑張ってきたわけですから、結果も大事ですが、その過程が一番の財産になったのではないでしょうか。むろん、この大舞台で自分たちが練習してきたことがまるで出せずに敗れたチームもあるでしょうが、それはまた次へのステップにしてもらいたいと思います。ウインターカップとオールジャパンはつながっている大会なのです。


オールジャパン2012の女子決勝に初めて駒を進めたのはデンソー アイリスでした。ウインターカップ2011の女子決勝には山形・山形市立商業高が初めて進出しました。その両チームにはそれぞれ大沼選手がいます。デンソーの大沼美咲選手と山形市立商業高の大沼美琴選手の2人は姉妹です。


姉の美咲選手は山形市立商業高の卒業生で、彼女が2年生、3年生のとき、山形市立商業高はウインターカップで第3位になっています。その両方で美咲選手は大会ベスト5に選ばれています。その姉に幼いころからあこがれ、追いかけてきた妹の美琴選手は今年、姉の成績を上回るウインターカップ準優勝という成績を残しました。もちろん今大会のベスト5にも選ばれています。すると今度は美咲選手がデンソーのメンバーとしてオールジャパン2012決勝の舞台に立ち、準優勝に貢献しています。


姉の美咲選手は言います。


「(ウインターカップ2011で)久しぶりに高校生の試合を見て、自分的にも刺激になったし、妹にも負けていられないなっていう気持ちは出てきたので、そこは妹にも感謝したいなと思います」


オールジャパン2012を女子の準決勝から見に来ていた妹の美琴選手は


「(デンソーも)初めての決勝進出だと姉が言っていて、自分も決勝に行けたし、姉も行けたし、どちらもすごく嬉しいです。特にデンソーは最後まで諦めない姿勢が感じられて、山形市立商業高みたいでウインターカップが懐かしく感じられました」


と言っています。


姉は妹に刺激を受け、妹は姉からバスケットに向きあう真摯な気持ちを改めて確認する。すばらしい心の交流だと思います。


美琴選手は来春からWリーグの姉・美咲選手とは違うチームに進むそうです。となれば、同じ舞台に立って、マッチアップをする可能性もあります。そのことをお互いに聞くと、妹の美琴選手は


「そのためには、まずは自分が頑張らないといけない…地道にひたむきに努力していきたいと思います」


と言い、姉の美咲選手は


「お互いに切磋琢磨していければなと思います。またぜひ同じ体育館のコートに立てるように頑張ります」


と言いました。


チームは違っても姉妹であることは一生変わりませんし、これまで同様、お互いがお互いを刺激し合って、もっともっといい選手になっていってほしいと思います。


大沼姉妹のようにウインターカップとオールジャパンをつなぐ関係は他にもあります。たとえばウインターカップ2011の男子決勝に立った香川・尽誠学園高の渡邉雄太選手。彼のご両親はトップリーグの元選手で、母の久美さんはオールジャパンでベスト5に選ばれています。またオールジャパン2012の決勝を見に来ていた福井・北陸高の木林毅選手の姉は、JXサンフラワーズのスタメン、木林稚栄選手です。親から子へ、兄、姉から弟、妹へ。そうやってバスケットの輪がもっともっと広く、濃くなっていけば、日本の未来は明るくなると思います。


今年12月23日から始まる予定の「ウインターカップ2012」は広島で開催されます。その後、元日からおこなわれる予定の「オールジャパン2013」は国立代々木競技場第一体育館を中心に開催されます。深い絆で結ばれた親子、兄弟、姉妹、そしてチームメイトとともにその舞台に向けて、また新しいチャレンジの始まりです。


ともに明日へ――がんばろうニッポン! がんばろう、日本のバスケット選手たち!






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小さくてもできる――熱い魂がもたらした優勝!RSS

2012年01月09日 19時32分


オールジャパン2012は、トヨタ自動車アルバルクが追いすがるアイシンシーホースを【69-65】で振り切り、5年ぶり2回目の天皇杯を下賜されました。今年のトヨタ自動車は才能豊かなタレントが多くいて、それらの選手が入れ替わり立ち替わり、フレッシュな状態でコートに入ってこられるのが最大の特長です。しかしながら、女子のJXサンフラワーズ同様、才能に任せたプレイをするのではなく、個々が自己研鑽を積み、それをチームプレイに昇華させて勝利に結びつけたのです。


そのなかでひときわエネルギッシュにコートを駆け回り、コート上でも、ベンチに戻っても声を出し続ける選手がいました。伊藤大司選手です。中学を卒業後に渡米し、モントロス・クリスチャン高校、ポートランド大学を経て、トヨタ自動車に入ったポイントガードです。アメリカでプレイしていたからといって、決して運動能力に長けたプレイヤーではありません。クイックネスがあるわけでもないし、ボールハンドリングが巧みだというわけでもありません。しかしながらヘッドコーチがチームに求めるバスケットを理解するバスケットIQやそれを愚直なまでに実践しようという気持ちの強さ、そしに何よりも勝ちに対する貪欲さはリーグでもトップクラスにあるように思います。


その伊藤選手が今日は積極的にシュートを狙っていました。


「このチームで勝ちたかったし、チームメイトがいいスクリーンをしてくれたのもあったんですけど、準決勝から調子がよくて、気分が乗っていたので『今日もやったるぞ』という気持ちはありましたね」


伊藤選手はゴールに向かう姿勢について、そう話してくれました。マッチアップの相手は日本代表のポイントガードでもあるアイシンの柏木選手です。その柏木選手を相手に、結果としてチーム2番目の11得点をあげているのです。


「柏木さんは初めからプレッシャーをかけてきて、攻めにくかったというのもありますし、オフェンスでもシュートは入るし、ドライブもできる選手なので怖さはもちろんありました。でもその分チームメイトがカバーディフェンスしてくれたし、オフェンスでは柏木さんを抜くためにスクリーンをしてくれたり、柏木さんを引きつけておいて僕にパスをくれたりしました。そういう意味では柏木さんのような選手に対するいい勉強にもなったし、いい経験にもなりました」


試合後に伊藤選手は柏木選手とのマッチアップをそう振り返ります。その柏木選手は伊藤選手が積極的に攻めてきたことに対して、こう言っています。


「(伊藤選手が攻めてくるとすれば)トヨタのプレイスタイルでもあるスクリーンしかないと思っていたし、結局それがすべてでした。スクリーンに対する守り方はわかっていても、インサイドプレイヤーとのコミュニケーションもあるし、体力的な部分もある。もちろん作戦はしっかりと練っていたし、ある程度対応できていた部分もあるけど、やっぱり試合の終盤になるにつれて、スクリーンが来るとわかっていても、限られたメンバーで戦うには体力的にきついところもありました」


つまりはスクリーンプレイにやられてしまった、そこから伊藤選手に決められてしまったというわけです。


スクリーンプレイなどの接触が起こるプレイは想像以上に体力を消耗します。だから頭ではかわし方をわかっていても、試合終盤になると体が反応できなくなってしまいます。その点ではトヨタ自動車が常にフレッシュなメンバーを投入できるという強みもあるのですが、それでもしっかりとスクリーンをかけて、その後のシュートを決めるにはチームと選手個々の力がうまく合致しないといけません。


【65-63】と2点差まで詰めてきたアイシンを突き放し、結果として決勝のゴールとなったのは、そんなスクリーンプレイからの伊藤選手のジャンプシュートでした。第4ピリオド残り32秒のことです。伊藤選手もそのシュートで勝利を確信したのかもしれません。


「僕たちのバスケットはチームで戦うバスケットで、それだけにチームの信頼があって初めて得点につながるんです。今日はそれがうまくつながった勝利だと思います」


伊藤選手はその活躍が認められ、大会ベスト5にも選ばれました。その紹介文は「気迫を前面に押し出す熱い魂の持ち主であり、トヨタ自動車のフロアリーダー」というものでした。けっして背は大きくありませんし、繰り返しますが運動能力が高いわけではありません。それでもオールジャパン2012のベスト5に入ったのは、熱い魂とそれをプレイで表現する実力を持ち合わせていたからでしょう。彼のプレイを見ていると、未来を担う小中高生の背の小さいプレイヤーにも夢を与えてくれるような気がします。小さくてもできるんだ、と――。



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「負けない男」の称号をかけてRSS

2012年01月09日 12時58分

「東日本大震災」被災地復興支援 第87回天皇杯・第78回皇后杯 全日本総合バスケットボール選手権大会も1試合を残すばかりとなりました。男子決勝戦は【トヨタ自動車アルバルク×アイシンシーホース】です。この2チームがオールジャパンの決勝で対戦するのは4年ぶり5回目で、過去4回はアイシンの3勝1敗です。さて2012年の決戦ではどちらが勝利を手にするのでしょうか。


大会4連覇中のアイシンですが、今なおチームに残っていて、そのすべてを経験しているのは桜木ジェイアール選手、柏木真介選手、高島一貴選手の3人だけです。つまり彼らはこの4年間、一発勝負のオールジャパンで一度も負けていないのです。しかし実はもう1人、この4年間オールジャパンで負けていない選手がいます。今シーズンからトヨタ自動車アルバルクのメンバーとなった竹内公輔選手です。オールジャパンでの連勝を伸ばすのは桜木選手たち3人か、それとも竹内選手か。そんなところにも決勝戦の注目点はあります。


桜木選手は決勝戦に向けてこう言っています。


「すべてのゲームは違いますし、決勝戦に向けては相手のプレイをしっかりと勉強して、自分たちのプレイを確認して、アジャストしていくだけだと思います。特にディフェンス面できっちりと相手を止めるところがカギになると思います」


そして昨シーズンまでチームメイトだった竹内選手についても言及しています。


「公輔はアウトサイドからのシュートを持っているので、しっかりと近い間合いで守って、ボックスアウトをして対応していきたいと思います」


一方の竹内選手は決勝戦に向けて


「優勝するためにずっと厳しい練習をしてきたし、どのチームよりも練習をしている自信はあるので、その努力が明後日報われるように頑張りたいと思います」


と力強く言い、さらに古巣のアイシンについては


「僕が抜けようともアイシンは強いチームですし、逆に僕が抜けたことでインサイドが強くなっているように思います。だからそのアイシンに勝たないと自分のバスケットボールプレイヤーとしての価値が問われると思います。(古巣ということで)少しは意識しますけど、逆にアイシンの選手のクセとかわかっているので、そういうところは有利に働くんじゃないかと思います」


と言っています。そして桜木選手については


「リーグナンバーワンのプレイヤーだと僕は思いますし、僕が彼を抑えられたらトヨタ自動車が有利に試合を進められると思います」


と言い、こう続けました。


「ただ僕はジェイアールみたいに長い時間プレイするわけではないので、チームメイトを信じて、出ている時間を120%の力でやれれば勝てると思っているので、味方を信じて戦いたいと思います」


チーム同士の戦いもさることながら、桜木選手と竹内選手のゴール付近での激しいバトルにも注目したいと思います。


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