現地レポート

点を線にした九州電力の逆襲RSS

2012年01月02日 22時52分

負けた悔しさというのは年齢に関係なく、勝負の世界に生きるものであれば、誰もが思うものです。昨年の「オールジャパン2011」の1回戦、社会人1位として出場した九州電力は関東ブロックを勝ち抜いてきたクラブチーム、千葉エクスドリームスに負けてしまいました。その悔しさをバネにして、今日、大学5位の日本大学を破り、3回戦進出を決めました。


「やることは昨年と変わっていませんので、メンタル面を特に強化してきました。昨年は油断があったというよりは、自分たちのプレイが何も出せず、地に足がついていない状態で終わってしまったので、今年はしっかりと地に足をつけて、自分たちのバスケットを表現しようという意識づけだけをしてきました」


今年から名実ともにコーチングスタッフに入り、実質ゲームを指揮している山口健太郎アシスタントコーチはそう言います。


しかし一言でメンタル面を変えるといってもそう簡単なものではありません。9月に行われた「平成23年度全日本実業団バスケットボール競技大会」では1回戦で優勝した日本無線に敗れています。この大会は、上位6チームが11月に行われた「東日本大震災被災地復興支援 第7回全日本社会人バスケットボール選手権大会(以下、社会人選手権)への出場権が与えられる大会で、その社会人選手権の上位2チームは、このオールジャパン2012に出場することができる大会です。つまり九州電力はオールジャパンに続く第一歩で敗れているのです(その後、「第63回全九州総合バスケットボール選手権大会」で優勝し、今大会への切符を手にしています)。


司令塔の中川直之選手は社会人選手権を逃したことが、チームのターニングポイントになったと言います。


「自分たちは勝ちたい気持ちでやっているんです。勝ちたい気持ちでやっているのに社会人選手権を逃したというか、僕たちのカテゴリーの全国大会で、1回戦で負けてしまった。3冠を目指そうと言っていたのに、その結果だったので『何かおかしいんじゃないか』、『ちゃんとやらないんだったら、バスケットもやめよう』という話もしてきました。でもそこで原点に立ち返れたといいますか、何のためにバスケットをやっているのか、誰のためにバスケットをやっているのかを考え直して、練習に取り組みだしたんです。やはりメンタル的な部分がしっかりしていないと、どんな練習をしても勝敗を決するところのブラッシュアップにまではいきません。もっといえば、すべての練習がおざなりになって、オールジャパンの舞台に立てるようなレベルに達することはできないので、そこをしっかりやっていこうという話をしてきました」


メンタル的な部分に加えて、今年は酒井祐典という慶應義塾大学出身の有望なルーキーが入ってきました。それは大きなプラス材料でした。しかし、中川選手は言います。


「それが点になってしまうと意味がないんです。組織として結集しないと強くなれないし、格上の体力も、エネルギーも、運動量も勝る大学生には勝てるはずがないので、いかにメンバーを掛け合わせて、強いものを作りだしていくか。それを常にみんなでイメージして、共有するようにしました」


選手は当然、九州電力の社員ということで平日には仕事があります。12月に入っての平日練習では10人が集まらないこともしばしばあったそうです。ルーキー・酒井選手は当初、仕事とバスケットの両立で本当に悩んだと言います。


「正直、大学のときに勉強とバスケットを両立してきた自信があったので、社会人になったばかりのときは、仕事とバスケットも両立できるだろうという甘い考えを持っていたんです。でも実際にやってみたら、仕事量の多さや、不慣れな1年目ということもあって、その環境の違いに本当に悩みました。練習も週に1回しかできないし、夏の大会でも不甲斐ない結果を残してしまったので、自分のなかで『自分のバスケットって何や?』って考えるほどでした。でもいろんな先輩に相談して、少しずつ自分の中で解決して、なんとか今大会は調整できて、目標である3回戦に進出できてよかったと思っています」


少なからず、 企業戦士は誰でも仕事とバスケットの両立に悩みを抱えていることでしょう。九州電力の選手もまた、本当にさまざまな思いを抱いて、それでもバスケットが好きだ、勝ちたいんだという気持ちで1つにまとまり、昨年の結果を上回る3回戦進出を果たしたわけです。


次の対戦相手はJBLで1位のトヨタ自動車アルバルクです。元アイシンシーホースの選手でもあった山口アシスタントコーチはその試合に向けて、こう言っています。


「特別なことはできないので、九州電力のバスケットをしっかりやって、選手たちにはJBLに対して何が通用し、何が通用しないのかを経験してもらいたいと思います。そういった経験をする場はオールジャパンしかありませんし、それが次の成長につながると思うからです」


トヨタ自動車には日本代表クラスが何人もいます。そんなトヨタ自動車に対してどこまで自分たちのバスケットをやり通すことができるか。もちろん負けるつもりでプレイする選手は誰もいないでしょう。1、2回戦のように思いきり九州電力のプレイを見せてほしいと思います。

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