現地レポート

たすきをつなぐ金沢総合高校のチャレンジRSS

2012年01月03日 19時06分

本日の最注目カードとなった神奈川県立金沢総合高等学校(以下、金沢総合高)と秋田銀行の一戦は、【69-50】で金沢総合高が勝利を手にしました。高校生のチームがオールジャパンのベスト8に進むのは、女子では1963年の宇都宮女子商業高校(現・宇都宮文星女子高校)以来、49年ぶりのことです。


その勝利の要因を探ったときに、もちろんエース・宮澤夕貴選手の存在があります。この試合も両チームトップの22得点・19リバウンドを挙げているほどです。しかしながら、宮澤選手1人の力で、チームが目標としていた「オールジャパンのベスト8」が手に入れられるほど、オールジャパン甘い大会ではありません。試合中に星澤純一コーチが「チームで攻めろ!チームで守れ!」と言っていたとおり、金沢総合高校シーキングス(女子バスケット部の名称)全員の力で勝ち取った勝利でしょう。


序盤に得点を重ねた金沢総合高の酒井愛選手はこう言っています。


「相手が社会人で、自分たちよりも体が強くて、プレイも力強いと思っていたので、そこから逃げないで、攻め気で打っていこうと思っていました」


相手は宮澤選手の攻撃を止めようと寄っていくだろうから、そうなれば自分のところにパスがくる。この試合に限らず、酒井選手は常にそう感じながらゴールを狙っていると言います。162cmとスタメンのなかでは一番身長が低い酒井選手ですが、その強気が序盤の流れを決めたと言っていいでしょう。もちろんそれは酒井選手だけではなく、ゲームの中盤以降に5本の3Pシュートで援護射撃をした岡村郁美選手にも言えることです。


その岡村選手はこんなことを言っています。


「いつも『金沢総合は宮澤だけ』と言われていて、そう言われるたびに悔しい思いをしているんですけど、でも宮澤がいて、自分たちが生きるところもあるので、そこは宮澤に感謝しています」


インターハイで優勝して以来、もう1つ結果を出しきれていなかった金沢総合高が、最後の大舞台でエースを中心にまとまったことで、49年ぶりの快挙は生まれたのです。


さらにいえば、この試合のカギはリバウンドでした。結果として秋田銀行の42本に対して、金沢総合高は55本も取っています。金沢総合高はインターハイの決勝でも大阪薫英女学院高校を相手にリバウンドで圧倒し、この大会への切符を手にしています。何かそのときの再現を見ているようなゲームでした。スタメン最小の酒井選手も果敢にオフェンスリバウンドに飛び込んでいました。


「大きい人はペイントエリアでゴチャゴチャなっているとリバウンドが取りにくいから、そのときに私が飛び込めば取れると思っているんです。だから常に飛び込むという意識を持ってやっています。また今日の試合前にも、星澤先生から『5人全員でリバウンドに行け』と言われていて、自分たちも行こうと気持ちでいました」


気持ちでもぎ取った55リバウンドであり、勝利ということでしょう。星澤コーチもリバウンドについて「リバウンドはよく気持ちが大事だと言われていますが、本当に気持ちの入った、昨日、今日の2試合だったと思います」と称賛しています。そして星澤コーチはこう言います。


「選手たちには大会前に『約3700校の高校女子バスケットチームの期待をすべて背負って戦いなさい』と言いました。ここで僕たちがベスト8に入って、来年のシード枠を取れば、今度のインターハイのチャンピオンチームがそこに入るはずなんです。そこがまた頑張ればいい。駅伝ではありませんが、高校生から高校生へたすきをつないで、大学生や実業団にチャレンジしていく。大学生や実業団は高校生に負けたらみっともないので、頑張る。そうすることで日本のレベルを上げることになると思うんです。上のほうだけで頑張るのではなく、下からもツンツンと突き上げていこうと」


次の相手はWJBL3位のデンソー アイリスです。デンソーには金沢総合高の卒業生である――当時は県立富岡高校でしたが――小畑亜章子選手がいます。そのデンソーをどこまで突き上げることができるのか。デンソーへのチャレンジは、ある意味で、今年でチームを去る星澤コーチと3年生から、次のチームの指揮を執る清水麻衣アシスタントコーチと下級生へのたすきとも取れます。そのたすきをしっかりつなげるためにも、明後日のインターハイ王者によるビッグチャレンジを完全燃焼で終わらせてもらいたいと思います。

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