現地レポート

逆境をチャンスに変えてRSS

2012年01月06日 12時48分

一文字目が同じ「バ」で始まるからというわけではないでしょうが、バスケットボールとバレーボールは同じ室内スポーツとして刺激し合える存在だと思います。今朝の新聞記事には、日本バレーボール協会の名誉顧問である松平康隆さんの訃報について掲載されていました。謹んで氏のご冥福をお祈り申し上げます。


その訃報記事を読んでいると、松平さんは幼い一人息子を事故で亡くしたあとに「逆境はチャンス」と考えて、その後のミュンヘンオリンピックで金メダルを取ったとありました。「逆境はチャンス」とか「ピンチはチャンス」というのは、松平さんに限らず、バスケット界で結果を残している多くの指導者が口にする言葉です。発想の転換といいますか、どんな状況であっても前向きであることが、チームを上昇気流に乗せるのでしょう。


大会第6日目の今日は、男子の準々決勝4試合が行われます。男子は8チームともJBLのチームとなり、つまりは1日でJBLの全チームの対戦が見られるわけです。


そんなJBLで結果として7位、8位に位置しているのがレバンガ北海道と東芝ブレイブサンダースです。今日の対戦相手はそれぞれリーグ2位のアイシンシーホース、リーグ首位のトヨタ自動車アルバルクです。


レバンガとアイシンはリーグでも2勝2敗なので、リーグの順位はまったく関係ないように思います。日本代表選手でもある桜井良太選手は力強く、こう言っています。


「アイシンとは今シーズンすでに4回やっていて、そのうち1回は桜木ジェイアール選手がいなかったですが、2回勝っているチームなので、オールジャパンでも勝ちたいという気持ちが例年よりも強いですね。それだけ今年のチームには可能性があると思うんです。自分でも自分のチームに期待しているところもあるし、やっぱりリーグ以上にチャンピオンが狙える大会だと思うので、勢いに乗って勝ちたいと思います」


今日の2試合目に行われるこの試合は激戦必至でしょう。


 



一方、リーグで2勝20敗と苦しんでいる東芝は、トヨタ自動車に対しても4連敗を喫しています。現役時代のオールジャパン2006で優勝を経験している東芝の北卓也ヘッドコーチは


「トヨタ自動車は現在リーグ1位のチームですし、うちは最下位ですから、チャレンジャー精神で思いきりプレイして、とにかくディフェンスをすれば勝機は転がってくると思います」


と言っています。タレント豊富でありながら、チームプレイにも長けているトヨタ自動車にどのようなディフェンスを見せるのか、楽しみなところです。 東芝のルーキー、篠山竜青選手は言います。


「リーグの第3戦目、第4戦目ではトヨタ自動車のオフェンスをかなり止めたという手応えがあるので、トヨタ自動車がどうこうではなく、は自分たちが自分たちのプレイを40分間し続けることができれば、いいと思います。勝負のカギはそこになると思います」


一発勝負のトーナメントですから奇襲をかけるのもいいと思いますが、最後は自分たちのプレイをして、真っ向勝負になるでしょう。そのときに「あきらめない、ひるまない、あなどらない」気持ちを持っていられるかどうか。その言葉も亡くなられた松平さんはバレーの選手によく伝えていたそうです。競技性やルールはまったく違いますが、根底でつながるところは同じです。今の逆境をチャンスと考え、最後まであきらめず、ひるまず、そしてあなどらずに戦えば、リーグ下位のチームが上位チームを下すことは十分にあると思います。


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3年ぶりの舞台へ――RSS

2012年01月05日 22時02分

シャンソン化粧品 シャンソンVマジックが、オールジャパンでは3年ぶりに準決勝の舞台へと駒を進めました。ポイントガードの林眞未選手は試合直後にこう言っています。


「下の子たちが…本川(紗奈生)と元山(夏菜)の2人が本当に頑張ってくれたので勝てました。チームとしては相乗効果というか、下からの突き上げがあるので、今はすごくいい状態だと思います。しかも(オールジャパン明けの)Wリーグの再開が富士通(レッドウェーブ)戦なので、オールジャパンで同じブロックになったときは「ここで絶対に勝たなければいけない」と、みんなでこの一戦にかけてきたんです」


オールジャパン2012の準々決勝、シャンソン化粧品はWリーグで現在1勝1敗の相手、富士通に【70-69】と勝利をあげました。林選手の言う本川選手(13得点)、元山選手(15得点)の活躍もさることながら、最終的な1点差の勝利は、この試合にかける気持ちの強さで勝ち取ったものでしょう。


ここ数年のシャンソン化粧品はどちらかといえば気持ちの弱いチームでした。負ければ泣き、相手に体をぶつけられれば動きが消極的になる。それを打開しようとすると、動きが雑になる。そんなチームが準決勝をかけた大一番で最後まで折れることなく、戦い続けたのです。


「正直、昨シーズンまでは『名門・シャンソン』、『リーグ10連覇のシャンソン』という過去にとらわれすぎて、やらなきゃいけないという気持ちが悪い方向に向かっていたように思います。でも今はここまで落ちたら(昨シーズンのWリーグでは6位)やるしかないという思いに、みんなが変わってきました。昨シーズンがバラバラだったわけではないんですけど、今は一人ひとりが自覚を持ってプレイしているし、チームとしても本当に一つになってきているなと感じます」


林選手はチームの変化をそう見ています。


変化という意味では、藤吉佐緒里選手も変わりつつあるように思います。これまではチームと同じように、当たられ、守られると逃げるような、気持ちの強さを前面に出しきれない選手でした。しかし今日は何度守られても次にまた立ち向かっていました。結果としては8得点でしたが、何かそれ以上のインパクトを受けました。


「まだまだ自分の気持ちやプレイをコントロールして、試合に持っていくことができていないので、試合によっては波があるんです。でも今日の試合では途中までは自分でもわかるくらい気持ちも入っていたし、足も動いていたと思います。ちょっとずつではあるけど変わってきていると思います」


藤吉選手も自分自身の変化を実感しているようです。


準決勝の相手はJXサンフラワーズで、藤吉選手の同学年である吉田亜沙美選手がいます。チームとしても、藤吉選手自身としても過去には「宿敵」だとか「ライバル」と呼ばれた相手ですが、今は大きく水をあけられています。しかも今シーズンのWリーグではすでに対戦を終えていて、4連敗を喫しています。藤吉選手は言います。


「久しぶりにオールジャパンの準決勝で戦えるし、(今シーズンに)もう一度JXと試合ができるということで、思いきり向かっていきたいと思います」


準決勝ではガムシャラにゴールに向かう藤吉選手、過去を捨てて戦い続ける新しいシャンソン化粧品のバスケットを見てみたいと思います。


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日本最高のセンターが見た金沢総合高RSS

2012年01月05日 18時21分

今、日本の女子バスケット界で一番安定感のあるセンターと言えば、デンソー アイリスの高田真希選手でしょう。現在中断しているWリーグでも得点ランキング1位を筆頭に、主要8部門中5部門でトップ5に入っています。昨年8月に行われた「第24回FIBA ASIA女子選手権 長崎/大村大会 兼 2012年ロンドンオリンピックアジア地区予選」にも女子日本代表選手として出場しています。


その高田選手がこう言っていました。


「同じベスト8のチームなので実力のあるチームですし、この舞台に立っている以上、自分たちと立場は同じなので、そのへんは遠慮することなく、デンソーのバスケットと自分のプレイを思いきりやろうって思っていました」


今日、高田選手擁するデンソーと対戦したのは、高校としては49年ぶりにオールジャパンのベスト8に進出した神奈川県立金沢総合高校。結果としては【86-62】でデンソーが勝ちました。高田選手も両チームトップの31得点を挙げています。「ライオンはウサギを捕まえるのにも全力を尽くす」と言いますが、まさに高田選手は普段のWリーグでのプレイとまったく変わりなく、その実力を県立金沢総合高にまざまざと見せつけたのです。


高田選手は県立金沢総合高について


「足が本当によく動いていて、ウチのルーズボールもほとんど相手に持っていかれたし、本当に(インターハイの)チャンピオンチームだなと感じました」


と言っています。積極的なルーズボールやリバウンドは今年度の県立金沢総合高の持ち味の一つでした。以前にも書きましたが、彼女たちはリバウンドを圧倒してインターハイの決勝戦を制しているのです。それは相手がWリーグの3位だろうが変わりありません。


そして高田選手は県立金沢総合高のエース・宮澤夕貴選手についても言及しています。


「ハイポストにフラッシュしてからのプレイが多かったんですけど、ボールを持ったときの駆け引きというのは自分も守っていて嫌だったし、何本もフリーで打たせてしまったので本当にうまいなと思いました。私が言える立場ではないですけど、自分としてもやっぱり若い選手には負けたくないですし、もし(女子日本代表チームで)一緒にやれることがあればいい刺激にもなると思います」


その一方で今日のゲームに関していえば、チームの作戦だったのかもしれませんが、宮澤選手がもう少しインサイドでパスを受けていたら、守っていても嫌だったかなと高田選手は言っています。


「ハイポストでのプレイができるからか外、外のプレイが多かったように思います。もう少しポストでボールをもらったら、周りにもいいシューターがいたので、いいアシストもできたんじゃないかなと思いました」


今後、女子日本代表チームで同じユニフォームを着ることがあれば、そういったさまざまことも――もちろんWリーグや日本代表になれば宮澤選手のポジションは大きく変わると思いますが――学べると思います。もちろん、宮澤選手だけではなく、すべての県立金沢総合高の選手は大きな可能性をまだまだ秘めています。この経験を次のステージに生かしてほしいと思います。そして宮澤選手には、今年度のメンバーの中で一番女子日本代表に近い選手ですから、これからもっともっと精進して、女子日本代表チームを引っ張る存在になってもらいたいと思います。


最後に蛇足ではありますが、この試合が県立金沢総合高の星澤純一コーチのラストゲームになりました。高校女子バスケット界で公立高校の指導者として最後まで戦い抜いた姿勢には本当に頭が下がります。


試合終了後、卒業生でもあるデンソーの小畑亜章子選手から花束が贈呈されたのですが、そのとき同校の卒業生ではないデンソーの選手が星澤コーチを囲んで、感謝のお礼をしていました。高校は違えども、これだけ慕ってくれる選手がいることは指導者冥利に尽きるでしょう。本当にお疲れさまでした。


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