現地レポート

恩師に捧ぐ最高のバスケットを!RSS

2012年01月05日 12時27分

「挑戦」とは文字どおり「戦い挑むこと」ですが、英語の「チャレンジ」には挑戦という意味のほかにも「(やりがいのある)課題、難問。覚悟」という意味もあります。WJBL3位のデンソー アイリスに挑む神奈川県立金沢総合高等学校、WJBL1位のJXサンフラワーズに挑む大阪人間科学大学はどれほどの覚悟を持って試合に臨むのでしょうか。女子準々決勝が行われる大会5日目の注目カードとなりそうです。


県立金沢総合高のエース、宮澤夕貴選手はこう言います。


「デンソーは自分たちよりも強い相手なので、チャレンジしようという気持ちで、一つひとつのプレイを大事にしていこうと思います。また高校の先輩である小畑(亜章子)さんがいるので、同じコートでプレイできるということも嬉しいですし、チャレンジしようという気持ちでやりたいと思います」


選手たちは星澤純一コーチから「常に考えろ」と言われているそうです。宮澤選手も「今、自分が何をすればいいのかをプレイ中でも考えるようにしています」と言います。デンソー戦では何をすべきが、今まさに考えているところでしょう。今年度でチームを去る星澤コーチが築いてきた「星澤バスケット」を結実させるためにも、心を決めて戦ってもらいたいと思います。


チームを去るのは星澤コーチだけではありません。大阪人間科学大の4年生も、この大会が大学生活最後の大会となります。そのなかでも田中友美選手、栗原三佳選手は大阪薫英女学院高校時代から長渡俊一監督の下でプレイしてきました。田中選手はWJBL7位の新潟アルビレックスBBラビッツを破ったあと、次のように言っていました。


「この試合を栗原と鬼頭(真由美・3年生)をはじめ、チームメイトとできる最後の試合にしたくないなと思って頑張りました。また長渡先生とのバスケットもこの大会で最後なので、7年間やってきたことをしっかり出せるように頑張りました。やるからには勝ちたいなと言っていて、その気持ちがあったから勝てたんじゃないかなと思います。みんなの力で勝てたのですごく嬉しいです」


そして今日の対戦相手であるJX戦に話を向けると


「挑戦します。決して戦えない相手ではない…うまくいけば競れるんじゃないかなと思うんです。長渡先生のバスケットは実業団にもないですし、どこにもないスタイルなので、自分たちのバスケットのをしっかり出せたら、行けるところまでは行けると思います。もちろん最後は経験の差などで勝てないというのはわかっているんですけど、自分や栗原は大学卒業後もバスケットを続けるので、それに向けて、どれだけできるかを試したいと思います。どうせ負けるんやったらぶつかって、内容よく、先生にも納得してもらって、最後を終えられたらいいなと。そうすれば来年のチームにもつなげられると思うので、そういうゲームをしたいなと思います。とにかく長渡先生とできるのが最後なんで楽しみたいと思います」


試合中に何度厳しいことを言われようとも、やはり田中選手たちは長渡監督の「娘」なのです。娘から父親に贈る最高のプレゼントは勝利が一番ですが、それ以上に自分が教えてきたバスケットをやり通してもらうこともこの上ない喜びになると思います。7年間の集大成を王者・JXサンフラワーズを相手にどれだけ見せられるか。大阪人間科学大の覚悟にも注目です。


「今を戦えない者に、次とか来年とかを言う資格はない」


これはサッカーの元イタリア代表、ロベルト・バッジョの言葉です。卒業後の進路はそれぞれみんな違いますが、今をしっかり戦って、次のステージに向かってもらいたいと思います。


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若き司令塔の野望RSS

2012年01月04日 22時17分

「今日はツーガードのような形になったので、そうなると彼がポイントガードをするという形になりました。特別、彼に『ポイントガードをやりなさい』と言ったわけではありません。出ている5人のなかで結果としてポイントガードになっただけです」


東芝ブレイブサンダースの北卓也ヘッドコーチはそう言いながら、一方で、


「彼に求めていることはポイントガードとしての力をもっとつけてほしいという期待と、あとはトランジションが得意なので、そこを出してほしいということ。あとは声を出して引っ張る力は持っていますので、リーダーシップみたいなところを求めています」


とも言います。


「彼」とはルーキーの篠山竜青選手のことです。今日の拓殖大学戦では約26分出場して、11得点・6アシスト、ターンオーバーはゼロです。格下相手とはいえ、今日の内容はチームとしても彼自身としても及第点と言っていいでしょう。そんな篠山選手は、昨年まで所属していた大学バスケットと、JBLという日本最高峰のバスケットの違いをどのように感じているのでしょうか。それを尋ねると


「アイシンシーホースの桜木ジェイアール選手を見ていてすごく感じることなんですが、本当に落ち着いているし、それほど運動量があるわけではないんですけど、バスケットIQが高いというか、そういうところの経験値が大学生とは違うところだなと感じています」


と答えてくれました。そのあたりはこれからの課題というわけでしょう。加えて、北ヘッドコーチからは「状況に応じたゲームコントロールが課題だ」と言われています。それは篠山選手自身も認めています。


「東芝はセットプレイが多いチームなので、状況に応じたコントロールができるようになることが今、一番の課題だと思っています。少しずつ手応えを感じていたのですが、11月のレバンガ北海道戦で勝って、自分でもこれからというときに怪我をしてしまったので、それがもったいなかったなと。今はしっかりとコンディションを戻して、気持ち的にも余裕が出るようにしたいところですね」


篠山選手のルーキーとは思えないリーダーシップは、おとなしい印象のある東芝において重要な要素であると思います。北陸高校時代は「やんちゃ」というイメージが強かった篠山選手ですが、東芝の一員となった今は落ち着いて取材にも応じています。


「東芝の選手はみんなやさしい…悪い言い方をすればおとなしいので、だから自分のそういう(やんちゃな)個性は失わないようにしたいと思っています。もちろん大人にならなければいけない部分はありますが、個性として残していかなければいけないところもあるので、そこのバランスはしっかりと取っていきたいです」


篠山選手の「やんちゃさ」が、現在JBL8位の東芝を上昇気流に乗せるかもしれません。しかもリーグ戦8位であっても、優勝を狙えるのがオールジャパンのおもしろさです。


「もちろん自分としてもオールジャパンの結果を勢いに変えたいという思いはあるので、一発勝負ということを前向きに捉えて、ここで一波乱起こしたいと思います」


大胆不敵な大物ルーキーか、それとも生意気なビッグマウスか――準々決勝のトヨタ自動車アルバルク戦では、東芝の若き司令塔・篠山竜青選手に注目してもらいたいと思います。

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歴史に名を刻んだ男たちRSS

2012年01月04日 17時43分

オールジャパン2012では公式プログラムとともに「財団法人日本バスケットボール協会80年史」という冊子も販売しています。これまでの日本のバスケットの歴史を編纂したものです。もし今後100年史、200年史を作ることになるのであれば、間違いなくこの試合はその1ページに加えられるでしょう。JBL7位のレバンガ北海道とbjリーグの千葉ジェッツとの一戦です。結果は【97-59】で北海道が勝ちました。


初めてJBLのチームと公式戦を行った千葉ジェッツのポイントガード・田中健介選手は


「もうちょっと終盤まで競った試合をしたかったなと思うんですけど、やっぱり力の差が出たんじゃないかなと思います。向こう(北海道)はバスケットがうまいというか、5人でうまく点数を取るという感じなんだけど、こちらは我慢しきれずに1対1をやっちゃって、それがミスになったというところに、この点差が出たんだと思います。個々というよりも、もっともっとチーム力を上げていかないと勝てないんじゃないかと思いました」


と、完敗を認めています。JBLの東芝ブレイブサンダースでプレイしたことがあり、今日の試合では千葉ジェッツでトップの16得点を挙げた板倉令奈選手は試合をこう振り返りました。


「正直10回やって9回は向こう(北海道)が勝つというほど戦力の差があることは初めからわかっていたので、でも一発勝負ということでその回のチャンスをつかめたらいいなと思ってやったんですけど…僕らのほうがサイズが小さいので、ディフェンスリバウンドを1回で取ること、そこから速い展開でフロントコートに入っていく。それを40分間持続できれば勝機はあるかなと思っていました。でも、やっぱり(敗因は)リバウンドですね。僕らは取れず、逆に向こうは僕らがやりたい1回でリバウンドを取って、そこからしっかりフロントコートに入っていったので、なかなかリズムが出なかったですね」


確かに板倉選手が言うように、千葉の36リバウンドに対して、北海道はそれを30本も上回る66リバウンドをあげています。これでは苦しい。ただ第2ピリオド以降、板倉選手が積極的にゴールに向かうなど、手応えもあったように思います。それは板倉選手も認めています。


「オンザコート1(外国人選手が1チーム1人しかコートに立てないこと)の練習を3回くらいしたんですけど、普通なら3回だけだと準備不足で自信が持てないとなるんです。でもそうはならずに、もちろんタフなゲームにはなると思っていましたが、すごく自信を持てたので序盤から積極的にプレイすることができました」


一方のレバンガ北海道・桜井良太選手は38点差がついている「けど」、と言います。


「やってみていいシューターが揃っているし、そこまで選手の差があるとは思っていません。ただ向こう(千葉)はちょっと外国人選手の1対1に頼りすぎるというか、あれだけトップポジションからガチャガチャやってくると僕らはそこに集まって守るので、そこでミスが起きていましたよね。もう少しチームとしてシステム的にプレイすれば、個々の選手のいいところが出て、もっといいチームになるなと思いました。そういうところで差がついたのかなと思います」


今シーズン、トーステン・ロイブルヘッドコーチの下、チームとして戦って、その手応えを感じている桜井選手だからこそ、そう見えたのでしょう。いろんなチームと戦えるからこそ見えてくるものがあります。それがバスケットの楽しさの1つでもありますし、選手たちもそれを感じながら、この歴史的な試合を楽しんだのではないでしょうか。


この一戦について、田中選手、板倉選手、そして桜井選手は以下のように言っています。


「本当に意味のある試合だったと思います。JBLとの初めての公式戦ということで僕らもすごく頑張ってやろうと力を合わせてやってきました。ただやっぱり…(JBLは)強かったですね。もっともっと交流をして、お互いが刺激しあって、両方がレベルアップしていけば、日本のバスケットも盛り上がるんじゃないかなと思います」(田中選手)


「オールジャパンだけではなく、また千葉ジェッツだけではなく、いろんなチームがもっとJBLのチームと交流を持って、日本のバスケットボールが明るくなっていければなと思いました。その最初の舞台に立てたことは光栄なことだし、すごく楽しかったです」(板倉選手)


「すごくいいことだなと思いました。リーグは別ですけど、お互い顔見知りの選手ばかりですし、お世話になった先輩もいます。選手としては一緒のリーグになってやりたいという思いがあるので、千葉ジェッツがbjリーグから始めてオールジャパンに出てきてくれて、こういうふうに試合ができたことは、結果は別にして、すばらしいことだなと思いました」(桜井選手)


日本のバスケット史の1ページに刻まれる一戦を戦い終えて、彼らは改めて、もっともっと日本のバスケットが盛り上がってほしいという気持ちを強く持ったようです。若い彼らにこれからの日本のバスケットボールを、これまで以上に引っ張っていってもらいたいと思いますし、歴史に名を刻んだ彼らならきっとそうしてくれるでしょう。


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