現地レポート

今の自分を見せつけろ!RSS

2012年01月04日 12時49分


勝負の世界において「ライバル」の存在は、選手の成長を促す大きなファクターであると思います。たとえばプロ野球の東北楽天イーグルスの田中将大投手と北海道日本ハムファイターズの齊藤佑樹投手だったり、サッカー日本代表でフォワードのポジション争いをしている李忠成選手とハーフナー・マイク選手などがそういう関係だと言えるでしょう。


「(レバンガ北海道の)トーステン・ロイブルヘッドコーチとは2年間一緒にやりましたし、折茂(武彦)さんにも2年間いろいろ教わりました。もちろん桜井(良太)とも同期として一緒にプレイしてきたので、いろんなことを思い出すかもしれないですけど、今度は敵として戦うので…オールジャパンでしか戦えない相手なので、このチャンスを大事にして、楽しみたいと思います。もちろん勝つつもりで頑張ります」


bjリーグ・千葉ジェッツの石田剛規選手はそう言います。石田選手は慶應義塾大学を卒業後にJBLのトヨタ自動車アルバルクに入団し、4年間プレイしていた選手です。そのときに一緒にプレイしていたコーチと選手がレバンガ北海道にいるわけです。特に桜井選手とは同期入団で刺激を与え合った仲です。チームは変わりましたが、お互い、どれだけ成長しているかを相手に見せる舞台を楽しみにしていることでしょう。石田選手は試合についてもコメントしています。


「カギはディフェンスになると思います。相手のエースである折茂さんや桜井に負けないようなディフェンスをすること。あとビッグマンが強力だと思うので、そこをいかにチームディフェンスで抑えることができるのかがポイントになると思うので、そこをしっかりと詰めていきたいと思います」


JBLとbjリーグのチームが公式戦で対戦する初めての試合です。結果もさることながら、どんな内容で、ファン、ブースターがどれだけ楽しんでくれるのか。楽しみが満載の試合になりそうです。


 



そしてもう1人、同期のライバルと先輩に立ち向かう選手がいます。九州電力の酒井祐典選手です。今日の相手、トヨタ自動車アルバルクには大学の同期である二ノ宮康平選手と、先輩である竹内公輔選手がいます。


「トヨタ自動車と対戦することは大会前から楽しみにしていたんで…先輩の竹内公輔さんもいますし、同期の二ノ宮康平もいますから。(彼らに)オレもやっているんだぞっていうところを見せたいですね。個人的には、公輔さんとマッチアップしたことが遊びでしかないので…といっても実際にマッチアップすることはないと思いますが、ドライブで逃げるプレイは僕のポリシーに反するので、たとえ目の前に公輔さんがいても逃げずに向かっていきたいと思います。本当に楽しみです」


同期や先輩は日本のトップリーグで活躍していますが、自分も自分の舞台で頑張ったからこそ、今日、同じコートに立つことができるのです。ポリシーを曲げずに、愚直に向かっていってほしい。酒井選手は言います。


「トヨタ自動車はJBLのなかでもさらにスーパースターの集団です。(自分たちとの)実力の差はわかっているので、今持っているものをすべて出しきりたいと思います。そしていろんな人に「九州電力」というチームもあるんだよということを見てもらいたいと思います」


すべての選手がすべての力を出し切ったとき、勝負の世界では勝敗以上の感動が生まれるのです。ライバルを前に、石田選手にも、酒井選手にも、もちろん桜井選手、折茂選手、二ノ宮選手、そして竹内選手にも自らのすべてを出し切ってもらいたいと思います。


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もう一度、8人でRSS

2012年01月03日 22時34分

「まさか、ここで終わるはずではなかったので…ちょっとショックというか、何で勝てなかっただろうというのが…」


WJBL7位の新潟アルビレックスBBラビッツ(以下、新潟)の高橋礼華選手は何とかそう言葉を振り絞りました。女子のベスト8をかけた本日の最終試合で、新潟は大学2位の大阪人間科学大学に【54-66】で敗れてしまいました。


試合は終始、大阪人間科学大のペースで行われ、新潟がリードする場面は一度もありませんでした。


「パスの回し方も遅かったし、決めるべきところのシュートが決まらなかった。ディフェンスでもスイッチミスが多かったり、そういったミスが積み重なって、相手の波に乗らせてしまったんじゃないかと思います」


高橋選手がそう振り返るとおり、とにかく新潟のミスが目立った試合でした。高橋選手はディフェンスでのミスを挙げていますが、オフェンスでのターンオーバーも大阪人間科学大より10回の多い25回もおかしています。前身である日本航空JALラビッツの精密さがまったく見受けられませんでした。そのことを荒順一ヘッドコーチにぶつけると「相手に当たられたときに個人個人が解決できない。逃げながらバスケットをやっているんです。試合でのキャリアのなさが出ていますね」と悔しげに言っていました。


そういったことは本来、厳しい練習の中で解決していくしかありません。しかし仕事をしながらの練習で、しかもメンバーが8人しかいないということも影響しているのでしょうか。高橋選手はそれについてこう言います。


「それはあるかもしれませんが、そういったことを挙げればキリがないと思います。何を言っても最終的には言い訳になってしまうのかなと思うので、素直に今日の負けを認めて…」


立て直します、と続けたかったのでしょう。でも、そこから先は言葉よりも涙しか出てきませんでした。女子のトップリーグであるWリーグのチームが大学生に負けたという悔しさと、彼女自身を見れば、一昨年にチェコで行われた「第16回FIBA女子バスケットボール世界選手権大会」に出場した日本代表選手でもあるわけです。「自分としては思いきりやらせてもらえている」だけにこんなはずでは、という思いでいっぱいだったのでしょう。


この涙を本物の力に変えるかどうかは自分次第です。大学生に負けたという、屈辱をバネに目の前にある壁を乗り越えたとき、高橋選手をはじめとする「新潟アルビレックスBBラビッツ」というチームは次のレベルにステップアップできるのだと思います。今いる8人で乗り越えるしかありませんし、乗り越えてもらいたいと思います。


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たすきをつなぐ金沢総合高校のチャレンジRSS

2012年01月03日 19時06分

本日の最注目カードとなった神奈川県立金沢総合高等学校(以下、金沢総合高)と秋田銀行の一戦は、【69-50】で金沢総合高が勝利を手にしました。高校生のチームがオールジャパンのベスト8に進むのは、女子では1963年の宇都宮女子商業高校(現・宇都宮文星女子高校)以来、49年ぶりのことです。


その勝利の要因を探ったときに、もちろんエース・宮澤夕貴選手の存在があります。この試合も両チームトップの22得点・19リバウンドを挙げているほどです。しかしながら、宮澤選手1人の力で、チームが目標としていた「オールジャパンのベスト8」が手に入れられるほど、オールジャパン甘い大会ではありません。試合中に星澤純一コーチが「チームで攻めろ!チームで守れ!」と言っていたとおり、金沢総合高校シーキングス(女子バスケット部の名称)全員の力で勝ち取った勝利でしょう。


序盤に得点を重ねた金沢総合高の酒井愛選手はこう言っています。


「相手が社会人で、自分たちよりも体が強くて、プレイも力強いと思っていたので、そこから逃げないで、攻め気で打っていこうと思っていました」


相手は宮澤選手の攻撃を止めようと寄っていくだろうから、そうなれば自分のところにパスがくる。この試合に限らず、酒井選手は常にそう感じながらゴールを狙っていると言います。162cmとスタメンのなかでは一番身長が低い酒井選手ですが、その強気が序盤の流れを決めたと言っていいでしょう。もちろんそれは酒井選手だけではなく、ゲームの中盤以降に5本の3Pシュートで援護射撃をした岡村郁美選手にも言えることです。


その岡村選手はこんなことを言っています。


「いつも『金沢総合は宮澤だけ』と言われていて、そう言われるたびに悔しい思いをしているんですけど、でも宮澤がいて、自分たちが生きるところもあるので、そこは宮澤に感謝しています」


インターハイで優勝して以来、もう1つ結果を出しきれていなかった金沢総合高が、最後の大舞台でエースを中心にまとまったことで、49年ぶりの快挙は生まれたのです。


さらにいえば、この試合のカギはリバウンドでした。結果として秋田銀行の42本に対して、金沢総合高は55本も取っています。金沢総合高はインターハイの決勝でも大阪薫英女学院高校を相手にリバウンドで圧倒し、この大会への切符を手にしています。何かそのときの再現を見ているようなゲームでした。スタメン最小の酒井選手も果敢にオフェンスリバウンドに飛び込んでいました。


「大きい人はペイントエリアでゴチャゴチャなっているとリバウンドが取りにくいから、そのときに私が飛び込めば取れると思っているんです。だから常に飛び込むという意識を持ってやっています。また今日の試合前にも、星澤先生から『5人全員でリバウンドに行け』と言われていて、自分たちも行こうと気持ちでいました」


気持ちでもぎ取った55リバウンドであり、勝利ということでしょう。星澤コーチもリバウンドについて「リバウンドはよく気持ちが大事だと言われていますが、本当に気持ちの入った、昨日、今日の2試合だったと思います」と称賛しています。そして星澤コーチはこう言います。


「選手たちには大会前に『約3700校の高校女子バスケットチームの期待をすべて背負って戦いなさい』と言いました。ここで僕たちがベスト8に入って、来年のシード枠を取れば、今度のインターハイのチャンピオンチームがそこに入るはずなんです。そこがまた頑張ればいい。駅伝ではありませんが、高校生から高校生へたすきをつないで、大学生や実業団にチャレンジしていく。大学生や実業団は高校生に負けたらみっともないので、頑張る。そうすることで日本のレベルを上げることになると思うんです。上のほうだけで頑張るのではなく、下からもツンツンと突き上げていこうと」


次の相手はWJBL3位のデンソー アイリスです。デンソーには金沢総合高の卒業生である――当時は県立富岡高校でしたが――小畑亜章子選手がいます。そのデンソーをどこまで突き上げることができるのか。デンソーへのチャレンジは、ある意味で、今年でチームを去る星澤コーチと3年生から、次のチームの指揮を執る清水麻衣アシスタントコーチと下級生へのたすきとも取れます。そのたすきをしっかりつなげるためにも、明後日のインターハイ王者によるビッグチャレンジを完全燃焼で終わらせてもらいたいと思います。

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