踊るひまわりたち
2012年12月23日 22時40分
ひまわりのように明るいチーム。実際にチームのトレードマークはひまわりらしい。それは、高知・県立岡豊である。誰かが3Pシュートを決めると、ベンチメンバーが立ちあがり踊りだし、ぐるぐる回る。
「自分がシュートを決めたときにアレをされるととても嬉しいです。また決めてやろうって思います 。」
県立岡豊のシューター、#8小西沙都は笑顔でそう話す。県立岡豊が九州チャンピオンの沖縄・県立西原を[65-59]で破り、2回戦に進出したのである。小西は2本の3Pシュートを沈めているが、その1本が試合の最終盤、猛追してくる県立西原に引導を渡す、値千金の3Pシュートだった。
「あのときはゴール下にリバウンドもいたので落ちても取ってくれると信頼していたし、思いきり打とうと思って、気持ちよく打ちました。西原は1対1が得意なチームで、私たちはチームプレイが得意。個人対チームでどちらが強いかって練習中から言っていて、それが私たちのチーム力で勝てて本当によかったです。」
敗れた県立西原はインターハイでも相手のゾーンディフェンスに苦しんでいた。それを研究していたのだろう、県立岡豊は終始ゾーンディフェンスを敷いて、県立西原の個人技を封じている。攻撃に転じれば、みんながコートを動き回り、チャンスがあれば思い切ってシュートを打つ。決まればベンチが踊りだし、決まらなければ、サッと引いて全員でディフェンスをする。ごく当たり前のことだが、それを最後まで徹底してやったからこそ、高い壁を乗り越えることができたわけだ。
下馬評では県立西原が有利と言われていた。女子U-18日本代表で、今大会の注目選手である#5川上麻莉亜を擁し、その川上と中学時代からコンビを組んで、ともに全国大会優勝の原動力にもなった#4川上美嬉もいる。しかし小西の言葉が意味するとおり、チーム力に個人で立ち向かっては、それが自分たちのスタイルであったとしても、ウインターカップの舞台で勝つことはできない。県立西原は最後までそれに気づくことができず、県立岡豊は事前に気がついたわけである。準備の差といってもいいかもしれない。
「(2回戦の)山口・慶進はチーム力があり、ディフェンス力もあるとても高い壁です。でも今日のように自分たちのやるべきことを徹底してやって、見ている人たちにも、自分たちも感動できるような試合をしたいと思います。」
今度も多くの人は「慶進には厳しいだろう」と言うかもしれない。だが高知が生んだ英雄、坂本竜馬はこんな句を残している――世の人は、我を何とも云わばいえ。我が成すことは、我のみぞ知る。
2回戦も県立岡豊は笑顔でプレイし、笑顔で踊りだす。
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努力の上に花が咲く
2012年12月23日 16時45分
努力の上に花が咲く――数ある横断幕の中でも福岡・中村学園女子のそれは全国的に有名なものの1つだろう。大会連覇を含む4回のウインターカップ制覇を達成しているその中村学園女子が、初戦で愛知・星城に[46-60]と敗れた。「下級生はよく頑張ってくれたのですが、私たち3年生の力不足があったと思います…」試合後にキャプテンの安間志織は言葉をそう絞り出した。
今大会の注目選手の1人である安間は、沖縄・北谷中時代に全国大会を制したキャリアを持つ。卓越したボールハンドリング、視野の広さから繰り出されるアシスト、そして自らも得点ができる万能のガードで、1年生のときから名門校のスタメンに抜擢され、2年生の昨年からはキャプテンにも任命されている。
「中村に入ったときは1年生から試合に出られるとは思っていなかったので、実際に試合に出られたことはとてもいい経験になりました。また2年生からキャプテンに任命されてチームを引っ張ってきたんですけど、そういうことも含めて、沖縄を離れて福岡に来たことはすごく勉強になりました。中村でバスケットができたことはよかったと思います」
自分を磨くためとはいえ、親元を離れることはけっして簡単な決断ではなかったはず。しかもチームは、1年生のときこそ3つの全国大会すべてで決勝戦に進んでいるが、そこから低迷し、昨年はウインターカップの出場権を失っている。チームをまとめるキャプテンとしては逃げ出したい気持ちもあっただろう。それでも逃げ出さずにチームを鼓舞しつづけた結果、最後の年にウインターカップの出場権を奪還した。
「レベルが高いと言われている福岡で、1点差とはいえ勝ったことは自信になりましたし、昨年のウインターカップに出ていない分、もう1回ウインターカップのコートに立ちたいという気持ちがありました。そういう意味では出られたことは嬉しいんですけど、インターハイも1回戦負けをしたので、ウインターカップでは1回戦を突破したかったです…」
勝ち負けだけを見れば「花」は咲かなかったかもしれない。しかし福岡で得たものを振り返れば、それが安間にとっての「大輪の花」と言えよう。卒業後は関東の大学に進学するという。次のステージでもよい目的を失わず、努力を続けていれば、必ず報われる。横断幕の言葉こそ、安間が得た最高の宝物になる。
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限界突破に挑む「35秒の約束」
2012年12月22日 17時57分
子どものころ、ご両親から「約束は守りなさい」と言われた人は多いだろう。たとえ小さな約束であってもそれを守ることは、大きな責任を持つことになる。明日開幕をするウインターカップの開会式で2人の主将が約束をした。選手宣誓である。
「宣誓、我々選手一同はフェアプレイ精神の下、日ごろの練習の成果を十分に発揮し、最後まで全力で戦い抜くとともに、バスケットボールを通して多くの方々に感動と最後まで諦めないことの大切さを伝え、さらには共に明日へ歩む原動力となるようなプレイをすることを、ここに誓います」
経験が武器になるバスケットボールにおいて、高校生はまだまだ経験が足りない。だがその経験の少なさが怖いもの知らずの大胆さを生み出し、結果として「最後まで全力で戦い抜くとともに、多くの方々に感動と最後まで諦めないことの大切さを伝え、さらには共に明日へ歩む原動力となるプレイ」につながる。
選手宣誓をした宮崎・延岡学園の寺園脩斗選手は言う。
「インターハイ後にコーチが変わって、最初は不安もありました。でも今はみんないい状態で、モチベーションも上がっていています。ウインターカップでは、新しいチームになってからずっとやり続けてきたディフェンスから走るバスケットを多く出したい。夏よりさらに走るバスケットを見せたいと思います」
北海道・札幌山の手の新堀京花選手も続く。
「ウインターカップに向けて1日1日を大切に練習してきたので、みんな、いい状態になっています。札幌山の手の伝統であるディフェンス、リバウンド、ルーズボールを後輩たちに引き継いでもらえるように、自分たち3年生がしっかりと体で表現して、スター選手がいない分チーム全員で最後までボールを追いかけていきたいと思います」
ともに連覇を狙えるチームだが、連覇を口にすることはない。まずは目の前の試合に集中して、1つひとつ勝ち上がるだけだと考えているのだろう。それでいい。でもあえて言おう。連覇を狙えるチームだからこそ、自分たちで限界を決めずに、その限界を超えた境地に挑んでほしい。アメリカの映画俳優で、カリフォルニア州知事だったアーノルド・シュワルツェネッガー氏はこう言っている。「限界を決めるのは心だ。心が何かをやれると思い描き、自分がそれを100%信じることができれば、それは必ず実現する」。
「35秒の約束」をいい意味での緊張感に変えて――ウインターカップは明日開幕する。
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