現地レポート

【女子展望】「今」を大切に戦い、世界へ飛び立とう!RSS

2012年12月21日 20時16分

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 現在の日本女子バスケットボール界をリードする選手と言えば、大神雄子と吉田亜沙美(ともにJXサンフラワーズ)である。オリンピックイヤーだった今年、結果としてロンドンの舞台に立つことはできなかったが、世界最終予選であと一歩のところまで女子日本代表チームを牽引したのはこの2人であった。2010年にチェコで開催された「第16回FIBA女子バスケットボール世界選手権大会」では大神が得点王、吉田がアシスト王をとったことを覚えている方もおられよう。


 そんな世界に通用する力を持っている2人でも、その経歴を遡っていくと「ウインターカップ」に行きつく。ウインターカップでの経験がその後の彼女たちを形作る大会であったことは間違いない。明後日から広島県立総合体育館で行なわれる「ウインターカップ2012」でも、大神や吉田のように世界に通用するプレイヤーに成長し、同時に国内の多くの子どもたちに夢を与える選手が生まれる可能性は十分にある。昨日の男子に引き続き、ここでは女子を展望してみよう。


  優勝候補の筆頭はインターハイ優勝の愛知・桜花学園だろう。女子U-18日本代表選手であり、チームの大黒柱でもある河村美幸を先頭に、馬瓜エブリン、井澗絢音、森田菜奈枝ら女子U-17日本代表の選手を多く抱えている。しかし桜花学園の強さは、才能豊かな選手を数多く集めているからではない。今夏のインターハイで全国大会50回目の優勝を成し遂げた井上眞一コーチが、才能豊かな選手に基本を再度叩き込み、「世界に通用する選手」へと育成しているからこそ、国内で無類の強さを発揮できるのである。インターハイ優勝でウインターカップの予選が免除され試合勘が懸念されるが、大学生などさまざまなカテゴリーのチームと練習試合を組むことでクリアにしている。怪我によるアクシデントや油断さえなければ、3年ぶりとなるウインターカップ制覇は十分に可能性がある。


 



 その桜花学園に対して、多くのチームが「打倒!」の旗印を掲げるが、その一番手を挙げるのは非常に難しい。インターハイ準優勝の愛媛・聖カタリナ女子と言いたいところだが、初戦で福岡・中村学園女子愛知・星城の勝者と対戦することになる。中村学園女子は1年生のときから主力としてチームを引っ張ってきた司令塔、安間志織を擁し、第36回大会(2005年)には優勝候補の1つだった東京・東京成徳大学を準々決勝で破って、ウインターカップを制した実績がある。1回戦の結果次第とはいえ、大会序盤の波乱劇を今年のウインターカップでも狙っているはずである。迎え撃つ聖カタリナ女子は熊美里、田村未来、宮崎早織の3ガードのスピードが生命線。勝敗のカギはインサイド陣が握っているものの、生命線を断たれないことにも十分に注意したい。


  また絶対的なシュート力を誇るエース、増岡加奈子がいる埼玉・山村学園にもチャンスはあるが、順当に勝ち上がると3回戦で福井・県立足羽、準々決勝で大阪・大阪薫英女学院と対戦することになる。この2校との対戦は熾烈なものになりそうだ。県立足羽はインターハイこそ1回戦で敗退しているものの、女子U-17日本代表の永井菜摘、三木里紗がいる。インターハイには間に合わなかったが、得意とする「粘るチーム」を作り上げていれば、増岡の攻撃力を止めることも十分にありうる。また大阪薫英女学院はインターハイの準々決勝で桜花学園に大敗しているだけに、準決勝でそのリベンジを果たすためには山村学園を突破しなければならない。名将・長渡俊一コーチがいつも以上に厳しくチームを鍛え上げて大会に乗り込んでくるはずだ。ただ桜花学園に対するリベンジという意味で言えば、増岡もそれを持っている。昨年のウインターカップの2回戦で対戦し、そのとき増岡は体調不良でゲームに出られずに、チームも負けているのである。今年は体調管理を含めてしっかり準備し、最後まで最高のパフォーマンスを見せてもらいたい。


 桜花学園の優位は揺るぎそうもないが、それでも1、2回戦の厳しい戦いを突破するチームは勢いに乗りやすく、勝利のチャンスを掴みやすくなる。上記以外にも東京・明星学園や、1年生ながらチームの中心選手になってきた赤穂さくらを擁する千葉・昭和学院、昨年のウインターカップで決勝の舞台に立った山形・山形市立商業も昨年の再現を狙っているはずだ。 また、桜花学園の3回戦の対戦相手を決める岐阜・岐阜女子北海道・札幌山の手の対戦が実現すれば、今年度の国体優勝チーム(岐阜県)と昨年のウインターカップ優勝チームの真っ向勝負になることとなり、沖縄・県立西原山口・慶進の実力校同士も勢いに乗ることができる好カードになる。これらのチームが「打倒、桜花!」に近い存在と言えよう。


 ウインターカップ初出場の2校、福島・県立白河旭兵庫・尼崎市立尼崎は大舞台で普段どおりの思い切ったプレイができるか。聖カタリナ女子がインターハイで2位になったことによりチャンスが巡ってきた愛媛・済美は27年ぶりのウインターカップ(当時は春の選抜)出場となる。ここで得た経験が後輩たちにつながり、聖カタリナ女子の牙城を崩すきっかけになるかもしれない。そういった視点も忘れずにチェックしたいところである。


一発勝負のトーナメント戦、勝つか負けるかはとても重要なことだが、それ以上に大切なことはウインターカップでの経験を今後にどう生かすか。大神雄子はウインターカップだけを見れば3年連続で優勝を果たしているが、最後の年はインドで開催されていた「第15回FIBA ASIA女子ジュニア選手権大会」を終え、その足でウインターカップに入っている。心身ともに疲れている状態でも優勝を果たすほどの精神力を身につけた。吉田亜沙美は3年時、優勝候補と言われながら準々決勝で中村学園女子に敗れている。試合が終わった直後、コートにうずくまり、チームメイトの支えがなければ立てなかった吉田の姿は今でも忘れられないだろう。勝った大神も、敗れた吉田も、目標として日本代表入りは考えていただろうが、現実に日本代表になれるかどうか、世界で通用するかどうかなどはわからなかったはずだ。ただ目の前の「今」にだけ集中し、戦い、その先に夢を掴んだのである。最高で最強の仲間たちと一瞬一瞬の「今」を大切に――ウインターカップ2012開幕まで、あと2日!


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【男子展望】広島で締めくくるオレたちのストーリーRSS

2012年12月20日 22時18分

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 バスケット界の冬の風物詩「ウインターカップ」――今年度の正式名称「『東日本大震災』被災地復興支援 JX-ENEOS ウインターカップ2012 平成24年度 第43回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会」が、今年は東京から離れ、12月23日(日・祝)から29日(土)まで、広島県立総合体育館で行われる。広島で開催されるのは、例年舞台となっている東京体育館が国民体育大会に向けた改修工事をするためで、東京以外で開催されるのは第18回大会(1988年)の神戸以来のこと。しかもその第18回大会までは3月に行われており、一般的には「(春の)選抜」と呼ばれていた。そのため、「ウインターカップ」と呼ばれるようになってからは初の東京外開催となる。

 さて、そんな「JX-ENEOSウインターカップ2012」開幕まであと3日、ここではまず男子の組み合わせを展望してみたい。

 大会をリードするのはインターハイ優勝の宮崎・延岡学園と、インターハイ準優勝、国体優勝の京都・洛南。延岡学園は昨年いわゆる「高校3冠」を達成していて、そのときの主力メンバーの一人、ジョフ・チェイカ・アハマド バンバが今年も残っている。高さやパワーだけではなく経験もあるだけに、留学生のなかでも特に脅威の存在となるだろう。また、ポイントガードの寺園 脩斗は、男子U-18日本代表として、8月の「第22回FIBA ASIA U-18男子バスケットボール選手権大会」にも出場しており、そこでの経験が武器として加わっている。夏とは違うプレイを見せてくれそうだ。夏との違いで言えば、チームを率いていた北郷 純一郎前コーチがインターハイ後に勇退し、内村 昌弘氏がコーチに就任したことも挙げられる。29歳の若き指揮官がチームにどんな風を吹き込んでいるかにも注目したい。

 一方の京都・洛南は、キャプテンの河合祥樹を筆頭に、個性豊かで実力のあるタレントがベンチの端にまで揃っている。状況に応じたさまざまな選手起用ができ、かつ個々がその力を存分に発揮する能力も持っているため、そう簡単に大崩れをすることはない。「冬の洛南」とまで言われたチームが4年ぶりの戴冠を目指す。とはいえ、その洛南は序盤から厳しい対戦を強いられることになりそうだ。初戦の相手は、富山・富山第一秋田・県立能代工業の勝者。富山第一は初出場ながら、男子U-18日本代表の馬場 雄大を擁しており、「必勝不敗」の県立能代工業といえども簡単に勝てる相手ではない。そんな注目カードを突破して波に乗ったチームと、洛南は初戦を争うのである。入り方を間違えると、一気に足元をすくわれる可能性がある。そこを突破しても、次に待つのはおそらく宮城・明成だろう。インターハイでは洛南が勝っているが、相手は男子U-18日本代表のヘッドコーチでもある佐藤 久夫コーチの率いるチームである。インターハイで苦しんだゲームコントロールを含め、夏の課題は4ヶ月でしっかりと克服しているに違いない。齊藤 拓己のシュート力、森 知史のインサイドプレイにも磨きがかかっていれば、メインコート一歩手前のこの対戦は激しい戦いになるだろう。



 おもしろい対戦カードとしては、香川・尽誠学園埼玉・正智深谷のリベンジマッチが挙げられる。この2校は今夏のインターハイで対戦し、そのときは正智深谷が勝っている。しかもシード校として待ち構えていた尽誠学園が、1回戦を勝ち抜いてきた正智深谷にそのまま突破されている。ウインターカップでは立場が逆転し、正智深谷がシード校として尽誠学園の勝ち上がりを待つことになるが、それだけにこの対戦がどのような結末を迎えるのか注目したい。また尽誠学園で忘れてはならないのが、身長200cmでポイントガードもこなせるオールラウンダー、渡邉 雄太の存在。男子U-18日本代表のキャプテンとして、チームをアジア選手権の4位に導き、昨年は年齢制限のない日本代表としても国際大会の舞台に立っている。日本の未来を担う逸材だけに、その一挙手一投足には自然と注目が集まるだろう。その注目をかいくぐり、自分のプレイをしたうえで、チームをまとめることもできれば、高校生活最後の大会を笑顔で締めくくることができるはずである。

 このように注目カード、注目校を挙げようと思えば、まだまだ挙がる。例えば、長野・東海大学付属第三が第1シードの延岡学園に対してどのようなディフェンスをしてくるのか。また、昨年のリベンジマッチとなる福井・北陸青森・県立弘前実業の対戦はどうなるのかに加え、その勝者は、インターハイベスト4の八王子を破って今大会の出場を決めた東京・京北と対戦となることも注目と言えるだろう。 さらには、福岡第一を破って名実ともに福岡代表として出場権を獲得した、前回大会4位の福岡大学附属大濠の2年生コンビ・青木保憲と杉浦佑成の活躍にも期待がかかる。茨城・土浦日本大学山形・県立山形南の対戦はいい意味で男臭い、熱のこもったゲームになりそうである。

 初出場校5校のうち、今夏のインターハイにも出場しておらず、文字どおり全国初舞台の奈良・大和高田市立高田商業山口・県立柳井がどんなプレイを見せてくれるのか。第2回大会(1972年)以来41年ぶりの出場となる和歌山・県立和歌山北は、41年前の出場選手が応援に駆け付けるかもしれないと想像すると、その応援席にも注目したい。

 いずれにせよ、彼らはみんな、自分たちの手で紡いできたストーリーを広島の地で締めくくることになる。有力校であるなしに関わらず、彼らの思いをできる限り、かの地で受け止めたい――ウインターカップ2012開幕まで、あと3日!

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