チームあってこそのエースRSS
2012年12月25日 12時22分
誤解を怖れずに書けば、青森・柴田女子は「中村優花のチーム」である。8月にオランダ・アムステルダムで開催された「第2回FIBA U-17女子バスケットボール選手権大会」でベスト5に選出された中村は、持ち前のパワーとスピードで得点、リバウンドを量産してきた。今シーズン初の直接対決とはいえ、同じ東北地方のチームであり、昨年のウインターカップ準優勝校でもある山形・山形市立商業は「柴田女子は中村を抑えれば勝てる」と考えていたに違いない。だがそう簡単に抑えられるものではなかったし、それ以上に周りの選手も中村に引っ張られるように実力を磨き上げてきていた。その結果、柴田女子が[49-47]で山形市立商業を下して、ベスト8進出を決めたのである。
「東北新人のときは山形商業と対戦する前に宮城・聖和学園に負けてしまって、その後のインターハイにも出られなくて、みんな悔しい思いをしてきました。でも負けたことによって自分たちのレベルは低いんだと自覚することができたし、ウインターカップに向けてひとりひとり自覚を持って練習することができました。今日の試合も途中で山形商業に当たられて気持ち的に圧されてしまったところもあったけど、最後勝つことができてよかったです。」
エースの中村はそう言って、最後にこう付け加える。
「仲間にもすごく感謝しています。」
第1ピリオド、いきなりの6連続得点を挙げた中村だったが、第2ピリオド以降は4得点にとどまっている。山形市立商業のディフェンスがダブルチーム、トリプルチームになってきたからだ。そのときにこれまで練習してきて、自分でも成長したと思える「冷静さ」を出すことができたという。
「これまでは自分のところにディフェンスが寄っているのにパスを出すことをせず、ただ点数が取りたいからといって無理に攻めてみたり、周りとの連携ができていませんでした。でもバスケットは1人じゃ勝てません。いくら点数を取れるといっても、チームの中の1人であることをしっかりと自覚して、チームプレイをちゃんとするように心がけてきました。」
その言葉どおり、中村に集中した山形市立商業ディフェンスの隙をついて、#10齋藤萌、#13積田美桜らが3Pシュートを沈めていく。中村はそのことに感謝しているのだ。
長岡萌映子(富士通 レッドウェーブ)のような得点力のあるオールラウンドプレイヤーを目指している中村。みずからの得点を伸ばすためにも、チームメイトをいい意味で利用することは今後の成長に欠かせない。明日の対戦相手は千葉・昭和学院である。女子U-17日本代表のチームメイト、#12赤穂さくらとのマッチアップが予想されるが、1年生の赤穂だけでは荷が重いとチーム全員で守ってくるだろう。そうなったときに今日の同じような判断ができるか。
「明日は自分たちのバスケットを展開して、ガンガン攻めて、ガンガンリバウンドを取って、ディフェンスでしっかり守って、オフェンス、ディフェンスともに動き回りたいです。」
つねによい目的を失わずに努力を続ける限り、最後には必ず報われる。ドイツの詩人、ゲーテの「ファウスト」にある言葉だ。昨年のウインターカップでは1回戦で敗れ、東北新人で負け、インターハイは県予選で敗退。それでも中村は、いや柴田女子は「ウインターカップで勝つ」という目的を持って、努力を続けてきた。もちろん、どのチームもすべからく努力をしているが、ウインターカップや新人大会で負けたこと、そしてインターハイに出場することすらできなかったことをプラスにした柴田女子の努力は、他校のそれと少し違うのかもしれない。明日の準々決勝もその努力の成果を発揮してもらいたい。
柴田女子は中村優花のチームではあるが、中村優花「だけ」のチームではない。
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