現地レポート

祝祭の日々を終えてRSS

2014年01月14日 11時37分

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オールジャパン2014が閉幕した。東芝ブレイブサンダース神奈川にとっては8年ぶりの歓喜、トヨタ自動車アルバルク東京にとっては無念の惜敗でその幕を下ろしたわけだが、TwitterやFacebookなどSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上では、早くも選手やファンが悲喜こもごもの言葉を発している。その一つひとつから伝わってくるのは、誰もが真剣に天皇杯・皇后杯を目指して戦い、応援した姿である。


真剣さ、ひたむきさ、一生懸命さ――これらの言葉を、ややもすると硬く、野暮ったく、時代錯誤のように感じる人もいるかもしれない。しかしながら、やはり“祝祭の日々”ともいうべきスポーツシーンを語るとき、それらはまだ強く息づいている。そしてその真剣で、ひたむきで、一生懸命な“今”こそが未来を作るのである。


オールジャパン2014はそうした試合が数多く見られた。しかし一方、実力差、戦力差を感じ、自分たちのバスケットを見失い、結果として大きく点差が開いたゲームも見られた。オールジャパンがプロもアマも混在する大会である以上、実力差、戦力差、経験値の差など、さまざまな格差が歴然としている面は確かにある。同じカテゴリー内であっても現時点でそうした差が生まれているところもある。しかしそれらを理解したうえで、強豪チームに立ち向かっていく姿に感動や応援の心が生まれるのではないだろうか。


男子決勝の東芝神奈川vsトヨタ東京も、女子決勝のJX-ENEOSサンフラワーズvsトヨタ自動車アンテロープスも、ゲームの結果や内容もさることながら、彼ら、彼女らのゲームに向き合う真摯な姿勢に多くの人が心を打たれたはずだ。東芝神奈川の佐藤 賢次アシスタントコーチの言葉を借りれば、一生懸命にやって、結果として「ダメでも、それは成長につながる」と、みんなが信じているのである。


日本代表に目を向けたとき、女子は昨年のFIBA ASIA選手権での優勝が示すとおり、世界への道を着実に歩んでいる。一方の男子はアジアを抜け出すことができずに、苦しみ、もがいているのが現状である。6年後の東京オリンピックに向けても整備をしながら、2年後のリオデジャネイロオリンピックや、東京オリンピック後の未来もしっかりと見据えておかなければならない。


そのためには一戦必勝のトーナメント形式で行われる「オールジャパン」という大会で、そのときどきの“今”を大切にしながら、戦うことがとても重要になる。日本のバスケットに足踏みをしている余裕などないのである。


もっとうまくなりたい。


もっと強くなりたい。


たとえ亀の歩みであっても、それぞれのチーム、それぞれの選手がそうした気持ちを忘れず、進歩を止めないことが日本のバスケットの未来を切り開くことになる。


日本の祝祭の日々は、世界の大きな祝祭へとつながっている。



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旅の途中RSS

2014年01月13日 19時05分

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女子に引き続き、男子決勝もポイントガードの話になって恐縮だが、やはり司令塔とは一朝一夕になれるものではない。むろん、その他のポジションもそうであるが、ポイントガードほどその成長が難しいポジションはないだろう。


オールジャパン2014は東芝ブレイブサンダース神奈川がトヨタ自動車アルバルク東京を[82-79]で破り、8年ぶり3回目の天皇杯を下賜された。その東芝のバスケットをコントロールしていたのが3年目のポイントガード、篠山 竜青選手である。


「今大会の勝因はチームのディフェンスが安定してきて、我慢強くプレイできたこと。それとチームの一体感が、トーナメントを勝ち上がるにつれて、高まったことだと思います」


確かに東芝神奈川のチームの一体感は見ていても気持ちがいいほどである。ベンチメンバーも選手である以上、試合に出たいはずだが、試合になればそれをいったん横に置いて、チームが勝つためにベンチでできることをしている。そんな雰囲気が強く出ている。


「ベンチに一体感は昨年からもよかったのですが、今シーズンから加入してきた大西(崇範)さんや平尾(充庸)はパナソニックトライアンズで昨年の優勝を経験していて、そのときのチームの雰囲気などを話してくれたんです。そうしたコミュニケーションをとることで、今年はさらにチームの一体感が増しているのだと思います」


篠山選手のその言葉を同じポイントガードの平尾選手に向けると、こう返ってきた。


「それは竜青さんが『昨年はどうやった?』って聞いてきたので、僕は『先を見すぎないで1戦1戦を戦うことと、大きな舞台で観客もたくさんいて緊張するかもしれないけど、自分たちのやるべきプレイをすること』だと言っただけです」



つまり篠山選手が、オールジャパンで勝つためにチームとして必要なことは何なのか、新加入で、しかも年下である平尾選手に聞いて、それをチームとともに実行したというわけである。その姿勢は平尾選手に「そうした竜青さんの背中をしっかりと追っていきたい」と言わせるほどだった。


そしてもう1つ、篠山選手の成長を語る上で外せないのが、昨年度のJBL最後のファイナルで敗れたときのことだ。篠山選手は人目をはばからず、涙を流していた。あれから266日。ついに掴んだ日本一の座。その期間を篠山選手はこう振り返る。


「ポイントガードなのでいろいろ考えるポジションなのですが、今大会はそれがすべて悪い方向に向かっていたんです。煮詰まっていたというか、それで自分自身としてはいいパフォーマンスができていませんでした。それでもリーグ戦で柏木(真介・アイシンシーホース三河)さんなどと対戦しながら、考えることをやめてはいけないし、すごく葛藤があったんです」


そんなとき、ポイントガード出身の佐藤 賢次アシスタントコーチから「竜青、練習から一生懸命考えているのはわかっているから、試合では自分を信じて、もっとひらめきでプレイしていいんだぞ」とアドバイスを受けた。


「それで肩の荷が下りました。考えることも大切だけど、試合ではひらめきを大切にしてもいいのかって」


佐藤アシスタントコーチが、篠山選手の今シーズンの成長と、そのシーンを振り返る。


「竜青はもともと力があるし、コントロール力も伸びてきました。でも今大会は準々決勝、準決勝と迷いながらプレイしていて、微妙に判断が遅れていたんですね。だから決勝戦ではパッと頭に浮かんだことをやりなさいと伝えたんです。たとえそれがダメだったとしても、それは竜青の成長につながりますから」


結果としてそれがオールジャパン2014の最終戦で、篠山選手の今大会で一番のプレイを引き出すことになったわけだ。


後輩ポイントガードの言葉と、先輩ポイントガードのアドバイスを受けて、チームを日本一に導いた東芝の正ポイントガード・篠山選手は言う。


「ポイントガードにとって何か大事なのかを考えながらやってきましたが、今日の試合で少し光が見えてきたように思います」


成長を続ける東芝のポイントガードが辿り着いた日本一の座。だがそれは彼にとって成長の一つの過程にすぎない。篠山竜青はまだ旅の途中――。



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孤高の司令塔を支えた友情RSS

2014年01月12日 18時52分

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「あのときのような顔は見たくないな。今年はいい顔をして終わろう」


その言葉がJX-ENEOSサンフラワーズの司令塔、吉田 亜沙美選手を最後まで奮い立たせることとなった。言葉の主は同期入社の寺田 弥生子選手である。現在は右膝のリハビリ中でチーム練習にも合流できていないが、それでもチームのため、吉田選手のためにオールジャパン2014では献身的なサポートをしている。


寺田選手が昨年のオールジャパン2013を振り返る。


「負けた後、リュウ(=吉田選手)がこれまで見たことのない表情を見せていたんですけど、自分も何て声をかけていいのかわからずに、助けてあげることができなかったんです」


負けた悔しさに加えて、親友の助けにもなれなかったことが、冒頭の言葉にたどり着く。


「リュウは周りにいろんなことを話すタイプじゃないので、自分がリュウのいろんな気持ちを聞いてあげて、コートのなかで助けることはできないけど、一人ですべてを背負わないように、気持ちの面だけでも助けてあげられたらって思っているんです」


吉田選手自身もそんな寺田選手に全幅の信頼を置いている。


「クゥ(=寺田選手)は丸7年間ずっとそばにいてくれて、私の弱さもすべて知ってくれています。そんなクゥに『どんなときでも1人じゃないんだよ』って言ってもらえると、自分も強くなれます。それが自分のプレイにも表れているんだと思います」


オールジャパン2014の決勝戦、トヨタ自動車 アンテロープスとの一戦はトヨタ自動車のゾーンプレスとチェンジングディフェンスに苦しめられた。吉田選手も何度か険しい表情を見せていたが、そのたびにベンチを見て、寺田選手を見て「5人で戦っているんじゃない、チーム13人で戦っているんだ」と再確認できたという。それが険しい表情のあとに気持ちを切り替えて、「もう1回、ディフェンスをしよう!」と声をかけたり、ふと笑顔を見せたりしているのだ。


些細な表情の変化だが、その笑顔が最後まで吉田選手を冷静でいさせ、その笑顔を作るもとになったのが寺田選手というわけだ。


「リハビリをしていて自分が一番きついはずなのに、自分よりもチームのため、私のためにサポートしてくれるクゥは、選手としてはもちろん、人間としても尊敬できます。今大会の優勝もクゥの支えがあってこそだと思っています」


吉田選手がそういえば、寺田選手も言う。


「どちらかといえば私のほうがネガティブで、すぐに下を向くんです。でもそのときにリュウが『頑張ろう』と言ってくれて、助けてくれるんです」


1人はコートの上でチームを引っ張り、もう1人は最後までベンチに座ったままだったが、それでもお互いの気持ちが通い合ったからこそ、JX-ENEOSサンフラワーズは2年ぶりの皇后杯を下賜されたのである。むろんそれだけではないが、それも大きな要素であることを忘れてはいけない。


右膝の調子も徐々にだが上がってきているという寺田選手は、なんとか今シーズン中にコートに戻りたいと思って、明日からまたリハビリに励むことになる。


「今度はコートの上でリュウを助けてあげられたらいいですね」


絆は…友情は人を強くする。



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