現地レポート

戻ってきた“合わせ”の達人RSS

2014年01月04日 16時11分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

計算されたノーマークだと言う。


「自分は周りのセンターに比べて高く跳べるわけでも、速く走れるわけでもありません。そうした特別な運動能力がない分、頭を使って、考えて動くようにしています」


そうして自ら作り出したノーマークのシュートチャンスを、デンソー アイリスのセンター、髙田 真希選手はきっちりと沈める。オールジャパン2014の準々決勝、JX-ENEOSサンフラワーズ戦でもチームトップの18得点を挙げている。体の強さも、ジャンプシュートのうまさもあるが、それ以上に味方の動きに合わせて多彩なポジション取りができる、それが高田選手である。


「そうした合わせだって、自分が誰よりも長けているとは思っていませんが、一瞬の細かい動きで相手をかわしてノーマークになることにこだわりはありますね」


昨年の「第25回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会」で、女子日本代表チームは43年ぶり2回目のアジア制覇を果たした。しかし高田選手はそのメンバーに入っていない。一昨年の夏に右足の第5中足骨を骨折したからだ。


ただ、今はその足も治り、元気にプレイしている。FIBA ASIA選手権を制したことで得られた、今年9月に行われるFIBA世界選手権への出場にも意欲を見せる。


「世界への意識は常にあります。もちろんそれにこだわりすぎて、昨年はチーム(デンソー)に迷惑をかけてしまったので、今はチームでのプレイに集中していますが、やっぱり世界を目指さないと成長もないですから」


世界のセンターは日本やアジアのセンター以上に背が大きく、力も強い。インサイドだけで勝負をするのは難しくなる。むろんインサイドで戦ってこそ、アウトサイドの生きてくるのだが、渡嘉敷 来夢選手や間宮 佑圭選手、王 新朝喜選手とは違う、“合わせる”タイプのセンターとして高田選手が日本代表に復帰すれば、チームにとって大きな武器となるだろう。


今日の試合で高田選手とマッチアップをした間宮選手が言う。


「リツさん(高田選手のコートネーム)はいつもポーカーフェイスで、何をしても動じないというか、何を考えているのかが探れないんです。淡々とした強さというか、安定して冷静に攻めてくるところが対戦相手としては嫌ですね」


裏を返せば、同じチームではそのポーカーフェイスが頼もしい力になるわけだ。


チームは敗れ、オールジャパン2014で彼女のプレイを見ることはできないが、リーグの後半戦、そして来年のFIBA世界選手権に向けて頼もしいセンターが戻ってきた。


[ 記事URL ]

キャプテンが示した陸川イズムRSS

2014年01月03日 20時12分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

ゲームの中にある些細なプレイが、そのチームの強さを示すことがある。石川ブルースパークスを[91-58]で一蹴した東海大学のキャプテン、田中 大貴選手がそれを証明してくれた。


第1ピリオド残り6秒で東海大のベンドラメ 礼生選手がシュートを決めたときのことだ。石川は残り6秒で最後の反撃に出るべくエンドラインからボールを大きく前に投げ出そうとした。そのボールを素早い飛び出しでカットしたのだ。田中選手はまた第2ピリオド残り1分47秒にも、コートの外に出そうになったボールを飛び込んでマイボールにしている。



「天理大学と石川の1回戦を見た陸川(章)監督から『ルーズボールなどは石川のほうが追いかけていた。本来なら下のカテゴリーである天理大がやらなければいけないことを石川がやっていた。東海大はその点で負けてはいけない』と言われていたんです。僕は口でチームメイトに言うよりも、行動で示そうと思って、そのプレイをしました」


経験を重ねれば重ねるほど、プレイの先を読めてしまい、1つくらいやられても勝敗に大きく影響はしないだろうとか、ボールが外に出ても、もう1度ディフェンスを立て直せばいいと考えがちになる。しかし田中選手はそうしなかった。それが田中大貴という選手であり、東海大の強さでもある。


陸川監督はそんな田中選手の成長をこう評価している。


「大人になりました。それは今年度の日本代表に入って、世界を経験したことが大きいと思います。世界を自分の目で見て、肌で感じて、今の自分の立ち位置と、次に向かうべき位置を考えたのでしょう。考える力のあることですから」


陸川監督は選手たちに「プレイで相手に隙を見せてはいけない」と言っているのだが、それをすぐに具体的な行動に移せるのが田中選手なのだそうだ。その意味では第1ピリオドの飛び出しも、第2ピリオドのルーズボールへのダイブも、隙を見せなかったという点では田中選手にとっては当然のプレイだったのかもしれない。ただその“当然のプレイ”をどんな試合でもやり続ける田中選手は、大学生であっても、日本を代表するトッププレイヤーだと言える。


明日は東芝ブレイブサンダース神奈川との対戦になる。今シーズンのNBLで「一番強い」と田中選手が見る東芝を相手にどのような戦いを見せてくれるのか。


「力は完全に向こうのほうが上。普通にやったら勝てない相手だし、今日よりも気持ちを1つにして、東海大のバスケットをすべて出すだけです」


40分間、隙を見せず、逆に東芝の隙をうまく突くことができれば、6年ぶりのベスト4も見えてくるはずだ。


[ 記事URL ]

ここから始まる未来RSS

2014年01月03日 16時07分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

最後まで桜花学園らしく“爽やかに、たくましく、そして華麗に”戦い抜いた――。



高校総体1位の桜花学園高等学校は3回戦でWJBL5位の三菱電機 コアラーズと対戦し、[67-103]で敗れたものの、井上眞一コーチも、選手たちもすべてを出し切り、爽やかな表情でコートを後にした。


これまでもオールジャパンに出場したことはある。だが、今年のチームはこれまでと大きく異なる点があった。昨日、大学5位の拓殖大学に勝利した後、井上眞一コーチが明かした「今年のチームはやる気がある」という点だ。


高校女子バスケットボール界を引っ張る桜花学園高は例年、「高校3冠」を目標にチームを作り上げる。その一方で3冠――というより、年末のウインターカップを制すると、一種の燃え尽き症候群にも似た感覚に陥ってしまう。それはそうだろう。彼女たちはまだ10代の高校生なのだ。高校生にとっての最高の舞台を制してなお、オールジャパンにもそれと同じくらい高いモチベーション保って戦えというのは酷な話である。しかし、今年のチームにはそれがなかった。大黒柱の馬瓜 エブリン選手は言う。


「昨年のオールジャパンでは初戦で敗れてしまったのですが、そのときウインターカップからの切り替えがうまくできていなかったんです。だから今年はウインターカップで優勝したことは嬉しかったけど、しっかりと切り替えて、オールジャパンで1勝をしようってみんなで言っていたんです」



その意気込みが、名将・井上コーチをも奮い立たせ、本気の勝負に向かわせたわけだ。


そうして勝ち得たWリーグのチームとの対戦。結果は完敗だったが、酒井 彩等選手は「思ったよりもシュートに行けました。決定力の差は出てしまいましたが、自分としてはもっと打つことさえできないと思っていたので、その点はよくできたんじゃないかと思います」と笑顔を見せる。井澗 絢音選手も「パワーも、技術も三菱電機のほうが上でした。でも自分たちのやれることはやれたと思います」と胸を張る。


ベンチ入りしている3年生プレイヤー7人のうち5人がWリーグのチームに入る予定である。パワー、技術、スタミナなど足りない部分は数多くあるが、それらを高校生のときに、しかも公式戦で体感できたことは大きな財産だろう。5人のうちの1人である井澗選手も「まずはパワーをつけなきゃいけません」と言いながら、「でもWリーグの舞台でプレイできることは本当に楽しみです」と笑顔を見せている。


入団してすぐに、今回敗れた三菱電機などと対等に戦えることはないだろう。間違いなく時間はかかる。それでも今日のゲームを基準に、彼女たちがこれからどう成長していくのか、楽しみである。2020年の主力となりうる選手たち。オールジャパン2014は彼女たちにとって出発点に過ぎない。



[ 記事URL ]