今こそ脱皮のとき
2014年01月11日 21時02分
これがトップリーグの中の、さらにトップレベルの戦いである。そのことをアイシンシーホース三河のルーキー、比江島 慎選手が痛感したに違いない。自身の15得点を含めて、5人が2ケタの得点をあげながらトヨタ自動車アルバルク東京に[83-89]で逆転負けを喫したのである。
序盤はアイシン三河のペースで大量リードを奪っていたが、それが逆にアイシン三河のメンバーたちを受け身に回らせてしまった。比江島選手もまた、プレイが徐々に消極的になっていく。
「前半の途中に点差が20点以上開いて、これで勝ったとは思っていませんが、このまま進めば勝てるのかな…20点はセーフティーリードかなって思っていたところがあったように思います。でも学生以上に20点はひっくり返るものなのかと知りました」
そこにはルーキーゆえの“甘さ”もあった。
「トヨタ自動車のゾーンディフェンスにオフェンスが狂わされて、みんなが迷って、迷ってシュートを打っていたように思います。僕自身も勝負どころでは(桜木)ジェイアール選手や柏木(真介)選手が攻めるのだろうというイメージがあって、彼らをずっと探して、パスばかりを考えていました。ルーキーなのだから、もっとアグレッシブにいけばよかったのに……」
比江島選手がNBLに入ってこうした激しい追い上げを受けたのは初めてのことだというか、しかし一方で柏木選手や桜木選手といったベテランはそうした厳しいゲームを経験している。彼らに任せておけば、最悪、負けることはないだろうと、どこかで高をくくっていたと認める。それが敗戦へとつながったのだ。
学生時代は「打倒、JBL(現NBL)!」と掲げて、何も考えず、ある種の開き直りでオールジャパンを戦っていた。それがいい流れを生んだこともある。しかし実際にNBLに、しかもアイシン三河というリーグでもトップクラスのチームに入ったことでその戦い方が変わってしまった。
「アイシンの選手だし、ミスをしちゃいけないっていう気持ちがプレイを消極的にさせているのかもしれません」
プロ選手として初めて臨んだオールジャパン2014を苦々しい結果で終わらせた比江島選手だが、敗れたからこそ学んだこともあるはずだ。先輩たちに任せきりになってはいけない。学生のときと同じようにがむしゃらに勝ちにいかなければ、トップリーグのさらにトップクラスの戦いでは何か起こるかわからない、と。
学生時代、チームがピンチになったときに比江島選手がギアを上げ、活躍し始めることを「“比江島スイッチ”が入る」と言われていた。まさかの逆転負けを喫した今だからこそ、その「比江島スイッチ」をプロ仕様に変えるべきである。
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次世代のエースが流した涙
2014年01月11日 15時45分
チームとしても、個人としても完敗だった。オールジャパン2014の女子準決勝1試合目、富士通 レッドウェーブはトヨタ自動車 アンテロープスに[43-70]で敗れた。若きエースの長岡 萌映子選手はチームトップの得点を挙げたが、それでも9得点である。長岡選手は試合をこう振り返る。
「トヨタ自動車のディフェンスのプレッシャーが強くて、ボールを運びきれませんでした。フロントコートに入ってからも自分たちのオフェンスができなくて…それは試合前からわかっていたことなんですけど、自分たちの攻め方だけに固執しすぎてしまいました」
富士通の、トヨタ自動車に対する強みはインサイドである。長岡、篠原 恵という日本代表クラスのインサイド陣を起点にして、相手が彼女たちに寄れば、アウトサイドからシュートを打っていく。チームのオフェンスプランはそうしたものだったのだろう。
しかしボールを運びきれず、運んでもミスを繰り返して強みを出し切れない。ターンオーバーはトヨタ自動車の「10」に対して、富士通は倍の「20」を犯している。
「自分もそうですが、ガードも、フォワードもうまくパスをインサイドに入れることができず、自分たちの強みを出せなかったことが、43点という結果につながったのだと思います」
長岡選手のその言葉に、トヨタ自動車のポイントガード・久手堅 笑美選手は表情を明るくする。
「そう言われるのは嬉しいですね。自分たちはボールを持たれてからの1対1では彼女たちに絶対に勝てないので、彼女たちにボールを持たせる前のチームディフェンスを意識しています。後藤(敏博)ヘッドコーチはどう評価するかわかりませんが、相手にそう言われることは嬉しいですね」
つまり富士通はトヨタ自動車の術中にまんまとはまってしまったわけだ。
そこで富士通にもう一手が出れば、試合の流れが変わることもあっただろう。しかし最後までその「次の一手」を出すことができずに、2年連続で準決勝敗退となった。
「自分の得点が伸びず、篠原選手がベンチに下がっているときは自分がポストで起点にならなければいけないのに、そこで(相手のプレッシャーに)弱気になってしまいました」
エースとしての責務を果たせなかったと、ロッカールームに引きあげる富士通の選手たちのなかで唯一、長岡選手は涙を流していた。
だが20歳の長岡選手1人に責任を負わせてはいけない。むろん彼女のさらなる成長はチームの上位進出に欠かせないが、トヨタ自動車がそうであったように、富士通もまたチームで戦い、全員でこの苦境から這い上がらなければ、同じことを繰り返すだけである。
「これが自分たちの実力だと受け止めて、リーグの後半戦に向かいたいと思います。もうこんな負け方はしません」
涙を止めて、最後はしっかりと言い切った長岡選手。踏み出す次の一歩に期待したい。
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チームの“輪”で日本一を目指す!
2014年01月10日 11時23分
明日、1月11日(土)から「オールジャパン2014」はクライマックスを迎える。気がつけば男子はトーナメント表の4つ角、つまりはNBLの上位4チームが順当に勝ち上がり、女子も4つ角ではないものの、WJBL5位の三菱電機 コアラーズが同4位のシャンソン化粧品 シャンソンVマジックを破ってのベスト4入りし、ほぼ順当と言っていい。むろん敗れたチームに力がなかったわけではなく、勝ち上がるチャンスも十分にあったが、それを退けて4強入りした男女8チームは、さすがというしかない。
だが戦いはここからさらにヒートアップする。
男子は優勝予想がまったく立たない。
推薦順位ではアイシンシーホース三河が1位だが、準決勝の対戦相手、トヨタ自動車アルバルク東京とは一昨年のオールジャパン2012の決勝で戦い、そのときはトヨタ東京が勝っている。昨年のオールジャパン2013では対戦していないだけに、観客のみならず、お互いにとっても2年ぶりの熱い戦いを切望していることだろう。ともに昨年、一昨年とはメンバー構成が変わっている。アイシン三河は男子日本代表のシューター・金丸 晃輔選手、スーパールーキー・比江島 慎選手が加わり、トヨタ東京にはハードワーカーの菊地 祥平選手が加入している。彼らがチームにどんなアクセントを加えるのかにも注目したい。
もう一方の和歌山トライアンズと東芝ブレイブサンダース神奈川の対戦も興味深い。ニック・ファジーカス選手を中心に据え、ポイントガードに篠山 竜青選手、シューターに辻 直人選手といった若くて、力のある選手を配する東芝神奈川は、リーグで26試合戦って2敗しかしてない(1位のアイシンと同じ勝敗数)。一方の和歌山にはパナソニックトライアンズとして昨年のオールジャパン2013の優勝を経験した選手が半数いて、そこに日本が誇るスコアラー・川村 卓也選手も加わっている。実力は同等と見ていい。
「オールジャパンは外国籍選手がコートに1人しか立てませんが、インサイドはこちらのほうが分はあると思っています。東芝は若いチームなので、勢いに乗らせずに、ディフェンスとリバウンドで崩していけば勝機は十分にあると思っています」
昨年の優勝を経験している和歌山のポイントガード、木下 博之選手は自信を見せる。
女子は日本代表の主力を多く抱えるJX-ENEOSサンフラワーズが一歩リードしているかに見えるが、勝負の行方は予断を許さない。なにしろそのJX-ENEOSに今シーズン唯一の黒星をつけている三菱電機が準決勝の相手だからだ。日本代表のシューターでもある三菱電気のキャプテン、宮元 美智子選手は言う。
「JX-ENEOSはインサイドが強力。1人では守れないので、チームでしっかり守って、リバウンドも全員で取りにいかなければいけません。攻撃では王 新朝喜選手のインサイドを守ってくると思うので、私たちアウトサイド陣が積極的にシュートを打っていきたいです」
櫻木千華選手を怪我で失った三菱電機だが、それでも宮元選手や王選手といった日本代表でも活躍した2人の力は侮れないところである。
富士通 レッドウェーブとトヨタ自動車 アンテロープスも壮絶な戦いになるだろう。トヨタ自動車はオールジャパン2013の準決勝で富士通を4点差で下して、その勢いのまま初優勝を果たしている。このカードが決勝戦への大きなステップになる可能性は今年も十分に秘めている。トヨタ自動車は富士通のエース・長岡 萌映子選手をどのように抑え込むのか。富士通は、老獪でありながら、川原 麻耶選手、栗原 三佳選手といった若手の勢いもあるトヨタ自動車にどのような戦いぶりを見せるのか。見どころ満載のゲームになりそうだ。富士通の司令塔、町田 瑠唯選手が言う。
「最終的にはディフェンスとリバウンド勝負になると思います。でも富士通のほうがトヨタ自動車よりもサイズがあるので、センターやフォワードの力強いポストアップをうまく使いながら、アウトサイドが空けば積極的にシュートを打っていきたいです」
若さの勢いか、ベテランの妙味か。
日本を代表するポイントガードで、アイシン三河の司令塔でもある柏木 真介選手が、準決勝以降に向けて、こんなことを言っていた。
「いいメンバーがいても、チームで戦えなければ勝てません」
2014年最初に日本一に輝くチームはどこなのか。混戦を抜け出すキーワードは2013年の「今年の漢字」なのかもしれない。
ちなみに今週末はこの冬一番の寒波が訪れるそうだ。昨年のような大雪になることはないだろうとテレビの気候予報士は言うが、代々木第1体育館は昨年と同じように熱い「日本一決定戦」になる。
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