次世代のエースが流した涙RSS
2014年01月11日 15時45分
チームとしても、個人としても完敗だった。オールジャパン2014の女子準決勝1試合目、富士通 レッドウェーブはトヨタ自動車 アンテロープスに[43-70]で敗れた。若きエースの長岡 萌映子選手はチームトップの得点を挙げたが、それでも9得点である。長岡選手は試合をこう振り返る。
「トヨタ自動車のディフェンスのプレッシャーが強くて、ボールを運びきれませんでした。フロントコートに入ってからも自分たちのオフェンスができなくて…それは試合前からわかっていたことなんですけど、自分たちの攻め方だけに固執しすぎてしまいました」
富士通の、トヨタ自動車に対する強みはインサイドである。長岡、篠原 恵という日本代表クラスのインサイド陣を起点にして、相手が彼女たちに寄れば、アウトサイドからシュートを打っていく。チームのオフェンスプランはそうしたものだったのだろう。
しかしボールを運びきれず、運んでもミスを繰り返して強みを出し切れない。ターンオーバーはトヨタ自動車の「10」に対して、富士通は倍の「20」を犯している。
「自分もそうですが、ガードも、フォワードもうまくパスをインサイドに入れることができず、自分たちの強みを出せなかったことが、43点という結果につながったのだと思います」
長岡選手のその言葉に、トヨタ自動車のポイントガード・久手堅 笑美選手は表情を明るくする。
「そう言われるのは嬉しいですね。自分たちはボールを持たれてからの1対1では彼女たちに絶対に勝てないので、彼女たちにボールを持たせる前のチームディフェンスを意識しています。後藤(敏博)ヘッドコーチはどう評価するかわかりませんが、相手にそう言われることは嬉しいですね」
つまり富士通はトヨタ自動車の術中にまんまとはまってしまったわけだ。
そこで富士通にもう一手が出れば、試合の流れが変わることもあっただろう。しかし最後までその「次の一手」を出すことができずに、2年連続で準決勝敗退となった。
「自分の得点が伸びず、篠原選手がベンチに下がっているときは自分がポストで起点にならなければいけないのに、そこで(相手のプレッシャーに)弱気になってしまいました」
エースとしての責務を果たせなかったと、ロッカールームに引きあげる富士通の選手たちのなかで唯一、長岡選手は涙を流していた。
だが20歳の長岡選手1人に責任を負わせてはいけない。むろん彼女のさらなる成長はチームの上位進出に欠かせないが、トヨタ自動車がそうであったように、富士通もまたチームで戦い、全員でこの苦境から這い上がらなければ、同じことを繰り返すだけである。
「これが自分たちの実力だと受け止めて、リーグの後半戦に向かいたいと思います。もうこんな負け方はしません」
涙を止めて、最後はしっかりと言い切った長岡選手。踏み出す次の一歩に期待したい。
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