これがわたしの生きる道
2014年01月02日 19時02分
かつては自分も“女王”の一員だった。しかし女王で居続けることもけっして楽ではない。心身ともにボロボロになりながら、それでも凛としていなければいけない。負けが許されることもない。怪我をきっかけに彼女たちは女王の座から降りる決心をした。バスケットもそのまま辞めてしまおうとしたが、結局はやめられなかった。“2人”は再びコートに戻る決意をした――。
1人は本田 雅衣選手。現在、山形銀行の行員として働きながら、同チームでプレイしている。
「大事な場面で3Pシュートを決めるなど、得点力を求められているのに、まだまだ自分のプレイが出し切れていません。復帰までの約1年間、何もしていなかったのですが、そのブランクが大きくて、バスケットをする体に戻すところから始めたんです。でも頭で思い描いているプレイがまったくできなくて…」
山形銀行に入行して2年目になるが、頂点を極めたときから見ればそのパフォーマンスは50%にも満たない。本人も「波が大きくて、いいときでも100%にはいかない」と悔しがる。
オールジャパン2014では大阪人間科学大学に[65-72]で敗れた。本田選手も調子が上がらないまま、得点をあげられずにゲームを終えている。この借りは2月の「高松宮記念杯 第46回全日本実業団バスケットボール選手権大会」で返したいという。
「練習量も減りましたし、そうした時間がないなかでいかに工夫をして、コンスタントに自分の力を出せるようにしていきたいです」
もう1人は諏訪 裕美選手。アイシン・エィ・ダブリュ ウィングスのセンターとして、昔と変わらないインサイドプレイを見せるが、それでもまだまだだという。
「自分の体のことを言えば、(引退の要因ともなった)腰と相談しながらプレイをしなければいけないし、チームの中でも自分の欲しいところ、欲しいタイミングでパスがもらえているかといえば、そうではありません。もちろんセンターである自分が合わせなければいけないのですが……」
彼女もまた自分のやりたいプレイの半分もできていない。それでも高校時代の恩師から「いるだけでも周りに与える影響は大きい」と言われた言葉で現役復帰を決断した。そのときの気持ちは忘れていない。
「昔は自分のやる役割がしっかりと決められていました。でも今は、当時していなかったようなパス回しでのつなぎや、ボール運びのときのフラッシュなど、ローポスト以外でもチームに貢献できるんだなって思えるようになりましたね」
女王ではないチームで復帰したことで、そのときとは異なるバスケットの楽しさに気がつけたのだろう。
日本の女子バスケットボール界をけん引する女王・JX-ENEOSサンフラワーズで頂点を極めながら、怪我のため同時期にチームを去った2人が、異なるチームでオールジャパンに挑んできた。パフォーマンスは当時の半分にも満たないが、2人は楽しそうにプレイしている。
本田選手は敗れたが、諏訪選手は勝ち残っている。明日のデンソー アイリス戦に勝てば、古巣との対戦である。
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背中で示したキャプテンシー
2014年01月02日 15時51分
最後まで愛知学泉大らしく、自分らしく“ディフェンシブ”に戦い抜いた。そのことは誇ってもいいはずだ。
愛知学泉大はWJBL9位のトヨタ紡織 サンシャインラビッツと対戦し、[59-68]で敗れた。しかしキャプテンの橋田 幸華選手は、多少の悔しさを残しつつも、やり切った表情でコートを去っていった。
「オフェンスはみんながやってくれるので」というとおり、けっして攻撃的な選手ではない。オフェンスではパスを供給することが彼女の役割といっていい。だがディフェンスではそうもいかない。全員の力を合わせてこそ、愛知学泉大のディフェンスは機能する。それはトヨタ紡織戦でも十分に証明できた。
「私自身、一瞬一瞬をさぼらずに、目の前のことを1つ1つやっていこうと思っていました」
そこにはキャプテンとしての矜持がある。橋田選手は試合後、ユニフォームにある「4」という数字をじっと見つめて言う。
「4番をつけているので……私が一生懸命やることで、みんなもついてきてくれると信じていました。そういう意味では、背中で示すことができたかな」
2013年の「全国中学校バスケットボール大会」、いわゆる「全中」の女子の部を制した津島市立藤浪中学校出身。中学生のときからキャプテンとしてチームを引っ張ってきた。その姿は今も変わらない。橋田選手らしいキャプテンシーの示し方だった。
卒業後は秋田銀行への就職が決まっているという。秋田銀行――昨日、自らが倒した相手である。
「最初はいろいろ言われるかもしれませんね。だって、昨年のオールジャパンでも倒しているから、2年連続で倒したことになるので……」
そう言って笑う橋田選手の笑顔は、秋田銀行のチームにとっても、窓口にとっても、大きな戦力となる。
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苦しみの先にある成長
2014年01月01日 19時22分
厳しい言い方をすれば、あってはならないゲームである。NBLの兵庫ストークスと大学6位の白鴎大学の一戦である。残り44秒、兵庫ストークスの谷 直樹選手が沈めたジャンプシュートで[66-64」となり、なんとか勝利を得たのである。
兵庫ストークスにとって難しいゲームだったことはわかっている。カテゴリーの下に位置するチーム(ここでいえば白鴎大学)が、カテゴリーが上のチームと対戦するとなれば、十分に研究し、さまざまな戦術を駆使してくる。敗れて失うものもないという、いわば開き直りの強みもある。一方の迎え撃つ側は必死に戦いながらも、どこかで余裕を持って、「これがNBLだ」と見せなければいけないプレッシャーがある。そうしたところに難しさが生まれてくるのだ。
言葉を変えると、上に立つ者の“余裕”は、えてして“油断”に変わる。
「NBLとしてのプライドが足りず、油断をしてしまったのかもしれません。僕も含めてまだまだ若いチームで、本当に甘いと感じました」
兵庫ストークスのキャプテン、梁川 禎浩選手は苦しんだ試合をそう振り返る。梁川選手自身も4得点。チームの勝利に貢献できたかと言えば、疑問が残る。
「それが今日の試合の一番の反省点です。僕が得点面でもチームを引っ張らなければいけないのに、僕が一番油断をしていました」
白鴎大学の齋藤 一人監督はそうした油断が生まれることを想定して、戦術を練り上げたという。エース・白濱 僚祐選手のファウルトラブルは誤算だったが、それ以外はほぼプラン通りだった。そうした術中に梁川選手をはじめとした兵庫ストークスがはまってしまったのである。
ただ勝ったことで次につなげることはできた。リーグ戦とは異なるトーナメント戦の難しさを、彼らはこの試合で感じ取ったことだろう。けっして喜ばしい経験ではないが、この経験を生かして、「NBLチームとして明日からは今日のようなゲームをしない」と梁川選手も誓う。
秋田県立能代工業高校、筑波大学、パナソニックトライアンズ、そしてリンク栃木ブレックスと各カテゴリーのトップチームでプレイしてきた梁川選手だけに、強いチームに共通するものが何かはわかっている。
「“自覚”です。僕はこれまで多くの偉大な先輩たちと接してきて、強いチームにはそれがあることを見てきました。先輩たちが僕に見本として見せてくれたことを、兵庫ストークスでは僕が見せていきたいと思います」
苦しんだ1回戦を無駄にはしない。
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