初出場校、“大海”の厳しさを知る
2013年12月23日 15時29分
勝てば女王との対戦が待っていた。コーチも選手もそのことをはっきり意識していたという。だが、その意識が足元を見誤らせた。ウインターカップ初出場の桐生市立商業(群馬)は、純心女子(長崎)に[63-72]で敗れた。
キャプテンの内御堂詩歩選手は「相手は背が小さいのに自分たちがインサイドを攻撃できず、ディフェンスもやってきたことを十分に出せなかった」と涙を流す。それが全国大会の1つの「顔」である。どのチームも都道府県予選を勝ち抜き、自信をもってウインターカップに出てきたに違いない。だがそこで対戦する相手もまた、たとえ背が小さかろうが、自分たちのバスケットを信じてコートに立っている。そこに差はない。だからこそ目の前の対戦相手に向かわなければいけないのに、経験のなさか、目の前の相手を見ずに、先の相手を見ていたのである。
むろん目の前の相手に勝つことが大切なことはわかっていたはずである。口にもしていただろう。それでも心のどこかに隙があった。西條佑治コーチも練習から「桜花学園を意識しすぎた」と認めているくらいだ。だがこれもチームが強くなっていくために必要な経験である。先を見すぎて、そこへ行きつく前に涙を流したチームは数知れない。女王・桜花学園でさえ、そういった経験しているのだ。
それでも悔しい思いはある。今日の経験を受け継ぐ1年生の高瀬愛莉選手は今日のゲームを振り返って、こう言っている。
「緊張している感じではなかったんですけど、気持ちはあるのに足が動かなかったんです。なんか“ふわふわ”している感じでした。これまでにそういった経験をしたことがないわけではないんですけど、今日は一段と強くて、試合を通してずっと続いていました。自分のなかでは『もっとできる!』と思うんだけど、実際には全然できなくて…」
なんでだろう? という思いを抱いたまま、40分間を戦っていたというわけだ。だがこれも全国大会でよく見るシーンある。高瀬選手は続ける。
「この悔しさを『次に生かす』というと、次があるからって思っているみたいで嫌なので、この悔しさをしっかりと受け止めて、同じことを繰り返さないように練習からしっかり頑張ります」
初めて出た冬の“大海”は入江を出たすぐのところで座礁してしまった。しかしそれは入江から出なければわからなかったことでもある。敗れはしたが、“大海”の厳しさを知った桐生市立商業はこれからさらに強くなる。
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ウインターカップ2013の福女
2013年12月23日 12時29分
兵庫県の西宮神社に「十日えびす大祭」という神事がある。毎年1月10日前後に行われるものである。その神事が厳修したのち、午前6時に「開門神事福男選び」が始まる。その名前からもわかるように、表大門を開門すると同時に、230メートル離れた本殿に向けて「走り参り」をし、1番に到着したものがその年の「福男」となるわけだ。
さて「ウインターカップ2013」が開幕した。初戦というのは誰もが緊張するゲームである。最初のシュートがなかなか決まらないことも多々ある。そんななか、午前9時ちょうどに4つのコートが同時にティップオフした第1試合の、すべてのコートを通じて最初のシュートを決めたのが県立中津北(大分)のセンター、中松 葵選手だった。いわばウインターカップの「福女」である。
「私たちはいつも先取点を取れずに、相手に与えることが多いので、今日は先取点を取ろうと話し合っていました。自分が取ろうと思っていたわけではないけど、フリースローになったときは『絶対に入る!』という気持ちで打ちました」
引いたら負けといわんばかりの強い気持ちが「福女」の栄誉を招き込んだのだろう。
試合は[81-66]で県立宇都宮中央女子に勝利し、2回戦進出。明日の対戦相手は大阪薫英女学院(大阪)である。
「大阪薫英女学院にはインターハイで負けているので、明日はリベンジを果たしたいと思います」
思いもよらず当方から突然の「福女」に指名された中松選手。こじつけではあるが、それでも「福」がついたことはけっして悪いことではない。明日のリベンジマッチ、「福女」中松選手の活躍が楽しみである。
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【大会前特集】2020年の主人公たちを探して
2013年12月22日 17時41分
師走――世間があわただしく今年の整理と、明くる新年に向けての準備を重ねているころ、バスケット界は年内最後のビッグイベントを開幕させようとしている。「東日本大震災復興支援 JX-ENEOSウインターカップ2013 平成25年度 第44回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(以下、ウインターカップ2013)」である。
今年も思えばさまざまなことがあった。バスケット界に限れば、オールジャパンでは休部の決まったパナソニックトライアンズが16年ぶりに男子を制し、女子はトヨタ自動車 アンテロープスが初優勝を遂げた。そう書き始めると、代表的なものをざっと挙げただけでも一言では語れないため、思い返したい方はぜひ当協会の公式サイトを見ていただきたい。
国内外でさまざまなシーンを生み出した2013年の最後を締めくくる「ウインターカップ2013」は、はたしてどのような大会になるのか。出場100チームの選手たちは土日も夏休みもなく、ひたすらにバスケットボールに打ち込んできた。むろん高校生らしい生活――未来の自分を作るための勉強や、淡い恋愛などを経験しながら、それよりも濃い友情もバスケットを通じて育んできたに違いない。だからこそ、勝敗を超えた熱いゲームが見られるはずである。
今年、2020年の夏季オリンピック(パラリンピック)が東京で開催されることが決定した。7年後といえば、いまの高校3年生は25歳である。男子は大学を卒業して2年目であり、若きスターとして注目される可能性が高い。高校卒業後にWリーグに進む可能性のある女子は、その7年間を世界と戦うための時間にすることができる。同時にそれは女子日本代表の中心選手になる可能性をも秘めることになる。
今日の開会式、主催者代表として登壇した日本バスケットボール協会の星 芳樹専務理事は挨拶の中で、こう言っている。
「2020年のオリンピックはあなたたちのオリンピックです」
2020年の主人公たちをいつ見るのか? 答えは2013年度の流行語の中にある。
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