目指せ、“和製シャック”!
2013年12月25日 15時21分
しつけのために親が子に伝えるものの1つとして「人を見た目で判断してはいけない」がある。大切なのは外見ではなく、中身であると。
県立川内の2年生キャプテン、鎌迫 諒太選手は小学生のことからバスケットを始めたが、これまで一度も「バスケット部?」と言われたことはない。「みんな、柔道部?とか、格闘技系ばかりを言ってきます」。183センチ・96キロの体格ではそう見られても仕方がないのかもしれないが、だからこそ、人を見た目で判断してはいけない。彼はれっきとしたバスケットボール選手なのだ。むしろその体格を生かしたパワープレイをしながら、フィニッシュのシュートタッチは柔らかい。
「NBAを見るのが好きで、特にシャック(シャキール・オニール)が大好きなんです。日本だと青山学院大学の永吉 佑也選手が大好きです。どちらも体が強くて、柔らかいシュートが打てるから。僕はシャックや永吉選手のプレイを見て、シュートの練習をしました。この体型で動けたり、シュートタッチがよかったら、かっこいいですよね」
そして笑顔でこう続けるのだ。
「僕はデブだと思っています。でもデブだからこそできることもあると思うんです」
その明るさもまた、彼の魅力である。試合中、どれだけ苦しい状況でも、味方のいいプレイには笑顔で応える。
「それは昨年の先輩が苦しいときでも優しく、笑顔で助けてくれたからです。それで自分も気持ちが楽になったので見習っています……一応、キャプテンですから」
そこでまた笑顔になる。
どんな体型であれ――背が大きい、小さい、太っている、痩せている――バスケットが好きで、多くの仲間たちと一生懸命に練習すれば、できないことは何もない。そのことを鎌迫選手は教えてくれる。
「来年はもっとチーム力をつけて、僕自身も筋肉をつけて、もっと動けて、もっとシュートを決められるようになって、今年のリベンジを果たしたいと思います」
最上級生になって、どのようなプレイを見せてくれるのか――目指せ、“和製シャック”!
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エースの品格
2013年12月25日 12時16分
勝負に敗れれば悔しい。本気で取り組んできたこそ、涙も出てくる。だがそれを超越すると涙の如何にかかわらず、すべてを出し切ったすがすがしさで笑顔になるのかもしれない。
ウインターカップ2013の女子は3強――桜花学園(愛知)と昭和学院(千葉)、そして聖カタリナ女子(愛媛)がリードしている。むろんそれを黙って見過ごすチームは1つもなく、一矢報いるというよりも、本気で倒そうと挑んでくる。だからこそ、見応えのあるゲームになるわけだ。
ベスト8をかけた3回戦、聖カタリナ女子に挑んだ慶進(山口)は[57-76]で敗れた。それでもエースの松本 愛美選手は最後まで笑顔だった。
「夏休みに練習試合をしたときは、ハーフのゲーム(10分×2つ)だったのですが、一度もベストなプレイを出せないまま、ボロボロに負けたんです。でも今日はラスト2分を切ったところまでカタリナの主力をコートに立たせることができたし、全力を出させることができました。夏から成長できたと思います」
全国トップクラスの相手に自分たちが最後まで戦えたという手ごたえが、彼女から笑顔を奪わなかったわけである。
「春から大学に進学します。そこで全国制覇のチャンスはあると思っているので、今回見つかった課題にしっかり取り組んでいきたいです」
昭和学院に[68-77]で敗れた県立足羽(福井)のエース、永井 菜摘選手は「不完全燃焼」と言って、涙を流した。
「国体で千葉県といいゲームをして満足してしまった自分がいたので、今日のゲームは国体のときよりも差が開いてしまいました。自分の力が足りなくて、最後までやりきれませんでした」
しかし話しがチームに及んでくると涙も徐々に引いてきて、少しだけ笑顔になった。
「個人としては不完全燃焼だけど、チームとしては足羽らしく一生懸命走ったし、ディフェンスもできたので、完全燃焼だと思います。足羽高校はこれからも続くので、卒業する日まで自分たちが経験したことを後輩たちにしっかり伝えたいです」
敗れてもなお、笑顔で前を見つめる松本選手と永井選手にエースの品格を見た。
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これぞ高校バスケの醍醐味
2013年12月24日 21時49分
敗れはしたが、やはり尽誠学園(香川)は戦う気持ちの見える、素晴らしいチームだった。
昨年、一昨年と渡邊 雄太選手(現在はアメリカ留学中)らを擁してウインターカップ準優勝に輝いたが、その主力が抜けた今年のチームは、今年は3年生が1人しかおらず、県大会でも勝てないところから始まった。そんなチームが色摩 拓也コーチに鍛え上げられ、インターハイ、ウインターカップに出場してきたのである。
ウインターカップ2013では中部大学第一(愛知)に[86-115]で敗れたが、最後まで足を止めることはなかった。それでも色摩コーチは「よくやったという気持ちと、もっとやれたのではという気持ちの半々です」という。そしてこう続ける。
「最後は生活の甘さなどが出たかもしれません。3年生が1人しかいない中、2年生が2年生でした。状況を見極めて、もっとやらなければという気持ちにならなかったことが、球際の一歩の遅れだったり、『まずい、ここは一つしっかりプレイをしなければ』というところに目を向けられませんでした」
厳しいといえば厳しい見方かもしれないが、それだけ、たとえどんな対戦相手であっても勝つことにこだわっていたのだとわかる。しかし下級生主体のチームが全国の舞台に立つことだけでも、来年以降の大きな財産となるのではないか。むろん、その財産をどう運用するかが一番大きな問題だが――。
その点は色摩コーチも十分に認識したうえで、「背の小さいチームこそ僕の原点。今回足りなかったところをしっかり磨いてきます」と言う。
尽誠学園はまだまだ雑草のチームである。しかし雑草に雑草の魂がある。雑草魂を持ったチームは負けたままでは終わらない。それこそが高校バスケットの醍醐味である。
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