燃えろ、ナンコウ!
2013年12月26日 18時21分
70点台のゲームに持ち込もう――県立山形南(山形)はそう考えていた。しかしインターハイ王者の京北(東京)の「ラン&ガン」は想像以上の速さだった。
「京北にスピードがあることはわかっていました。だけど前半はそのスピードに対応ができず、点差をつけられてしまいました」
県立山形南のキャプテン、阿部 龍星選手は試合をそう振り返る。その言葉どおり、前半、県立山形南がなんとか得点をしたかと思ったら、その数秒後には京北にレイアップシュートを決められるといったシーンが何度もあった。ディフェンスが最大の武器であるはずのチームが、その武器を出すことさえできなければ、リズムを掴めるはずもない。細谷 尚寿コーチの「前半は選手が引いていた」という言葉と合わせれば、頭では京北の速さをわかっていたが、対応できるのか不安に駆られ、心のどこかで受けに回っていたのだろう。敗因はそこにある。
それでもやはり県立山形南のディフェンスは全国でもトップレベルであることに変わりない。それについては阿部選手も胸を張る。
「粘るオールコートディフェンスは3試合ともできたと思います。今日の後半も京北にそのディフェンスが効いたと思っているので。僕たちが地道に練習してきたディフェンスは全国でも通用するんだと実感することができました」
むろん悔しい思いがないわけではない。その思いは前田 悟選手ら後輩たちに託す。
「オフェンスの組み立てをもっと考えなくてはいけません。僕たちは単発のシュートばかりでしたが、京北のようにゴール下で簡単に得点を取る組み立て方をしないと……でも、そういった意味では後輩たちにいい経験をさせることができたと思います。そこを追求していってほしいです」(阿部選手)
高校バスケット界の上位を独占する私立校の抵抗勢力として、ウインターカップ2013の男子ベスト16で唯一の公立校は、この経験を生かすことができるか。来年はナンコウ(県立山形南の通称)の意地を見せてほしい。
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天真爛漫なスピードクィーンが女王に挑む
2013年12月26日 13時05分
聖カタリナ女子(愛媛)のキャプテン、宮崎 早織選手はスピード、テクニック、スタミナ、どれをとっても全国トップレベルの選手である。だがそれ以上に彼女を輝かせるのは、その天真爛漫さだ。
ウインターカップの女子ベスト4をかけた準々決勝、聖カタリナ女子は大阪薫英女学院(大阪)を[84-80]で振り切った。しかし試合展開としては、いったん聖カタリナ女子が大きくリードしたものの、そこから大阪薫英女学院の猛追を受けている。一進一退の状況に陥り、天真爛漫な宮崎選手からもいつもの笑顔が消えていた。
「やばい、やばいって、自分のなかで余裕がなくなって、それが顔に出ていたんだと思います。後輩たちの表情も落ちているがわかったので、もっと声を出して、自分が盛り上げていかなければいけなかったんですけど…キャプテンとしての課題が残りましたね」
それでも準決勝への切符は手に入れた。相手は桜花学園(愛知)である。桜花学園とは宮崎選手が入学して以来、全国大会で5回対戦しているが、一度も勝っていない。アンダーカテゴリーの女子日本代表ではチームメイトである桜花学園の選手たちも、「学校に戻ればライバル。負けたくないですね」。
そんな宮崎選手は中学時代、桜花学園に進学したいと思っていたそうだ。しかし桜花学園と言えば全国の精鋭たちが集まってくるチーム。そこに進むよりも聖カタリナ女子の一色 建志コーチ(現・日本バスケットボール協会ジュニア専任コーチ)の下で教わりたいと思うようになって、同校への進学を決めたという。「その選択は間違っていなかったと思います」。
あこがれていた桜花学園と、高校生活最後の対決を前にして、自分がここで変わらなきゃ、と気持ちも昂っている。
「本当に楽しみなんです。ここで桜花学園を倒せれば、自分の中でも何かが変わると思っているから。練習では桜花学園よりも走ってきたと思っています。だから最後はカタリナらしくディフェンスをして、走って勝ちにいきます」
もちろん最後まで笑顔でいることも忘れるつもりはない。
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ピンチはチャンス
2013年12月25日 19時55分
苦しい展開を打ち破ったのは1年生だった。といっても、並みの1年生ではない。スーパールーキーである。だが、これまた表現が難しいのは、中学時代は決して全国的な脚光を浴びていたわけではない。つまり静かに研ぎ澄まされていた才能を、高校で一気に表へ出したスーパールーキーと言っていい。福岡大学附属大濠(福岡)の牧 隼利選手である。
ウインターカップ3日目、優勝候補の1つである福岡大学附属大濠は土浦日本大学(茨城)を[88-68]で破り、3回戦進出を決めた。土浦日本大学は福岡大学附属大濠が苦手と言われてきたゾーンディフェンスを敷き、攻撃ではエースの山崎 拓選手が積極的に1対1を仕掛けてきた。その思い切りのいい攻撃に福岡大学附属大濠のキャプテン・青木 保憲選手、切り込み隊長の葛原 大智選手がともにファウルトラブルに陥り、ベンチに下がることを余儀なくされてしまう。
傍から見ると福岡大学附属大濠の苦しい状況なのだが、牧選手は笑って言う。
「僕はいつも、3年生を押しのけてでも試合に出たいと思っているので、あのときはラッキーと言えばラッキーでした」
片峯 聡太コーチも「一言でいえば、相当負けず嫌いな選手」と認めるほどのルーキーは、チームの苦境をむしろ楽しんでいた。さらに片峯コーチは牧選手をこうも評する。
「安定感という意味ではスタメンで出してもいいくらいなんです。でも牧がベンチにいることで青木も葛原もアグレッシブにプレイできる。今日のようなファウルトラブルになったときでも安心して出せる選手です」
スタメンでも、シックスマンでもどちらでも使える、いわば二刀流。今日の土浦日本大学戦では、その片峯コーチの信頼に応えた形になる。
もう1つ付け加えれば、牧選手は今年度の男子U-16日本代表の主力でもある。男子U-16日本代表は9月末にイランで行われた「第3回FIBA ASIA U-16男子バスケットボール選手権大会」に出場し、来年の「第3回FIBA U-17男子バスケットボール世界選手権大会」への切符を初めて手に入れている。
「アジア選手権に出て、体を強くする意識が芽生えました。それは今日の試合でもリバウンドなどで出せたと思います」
だが、これで終わりではない。ここからさらに戦いは厳しくなるのだ。負けず嫌いの牧選手にとって、インターハイのように再び途中で負けることは許しがたいに違いない。
「3年生に負けないプレイをして、絶対に日本一になります」
この勝利から福岡大学附属大濠と、スーパールーキー・牧隼利選手の勢いが加速する。
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