【ロンドン2012パラリンピック特集】 ハヤテジャパン 岩佐 義明ヘッドコーチ
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2012年9月3日
8月29日(水)よりイギリス・ロンドンで開催中の“パラリンピック”に出場しております車椅子バスケットボール男子日本代表チームこと「ハヤテジャパン」。
日本初参加となった1964年東京パラリンピック以来、11大会連続出場中の車椅子バスケットボール男子日本代表。これまでの最高成績は1988年ソウル大会、そして前回2008年北京大会の7位。強化合宿や海外遠征を重ねてきたハヤテジャパンの目標は、準々決勝の壁を乗り越えベスト4進出。さらにメダル獲得を目指します。
宮城MAXが中心となり、さらに北京パラリンピック経験選手も多く、長い年月をともに過ごした分、チームワークは抜群。スピードを活かした疾風(ハヤテ)の如く、世界の強豪に立ち向かいます。
予選ラウンド4試合を終え、1勝3敗のハヤテジャパン。決勝ラウンド進出をかけ、本日15:15(日本時間23:15)より、開催地・イギリスと戦います。
ハヤテジャパンを率いる岩佐 義明ヘッドコーチのロンドンパラリンピックへ向けた意気込みをご紹介します。
岩佐 義明ヘッドコーチ
─ 日本代表チームの特徴は?
今年4月から毎月のように海外遠征を行わせていただき、最終合宿を8月上旬に角田市で行いました。遠征では課題が見つかり、(最終合宿の時点では)しっかり修復しながら総仕上げの状態です。どこよりも身長は低いですので、大きな相手に対して戦うにあたり、やはり相手のディフェンスの体勢が整う前に攻めるアーリーオフェンスをやらないといけません。まともにゴール下を固めてセットオフェンスをしようにも、車椅子でも一般のバスケットと同様に世界ではなかなか歯が立ちません。やはり速さで勝負するしかありません。オフェンスの回数を多くするためにも、ディフェンスが重要です。いろんな変化をつけたディフェンスやプレスディフェンスを使い分けながら、相手のボールを奪って速攻に転じるようなバスケットを目指しています。強化を続けて来たことで、スピードも十分に活かせるようになりましたし、それぞれ特徴ある良い選手を選んでますので、徐々に良いチームになっていると実感しています。
─ ディフェンスを重視されているとのことですが、車椅子バスケットの場合はボールのないところでも激しいポジション争いがあり、リバウンドも含めてパワー勝負になるのでは?
確かに車椅子バスケットは、ボールの逆サイドのディフェンスも非常に重要になります。一般のバスケットであれば、ヘルプポジションで対応するのでしょうが、車椅子バスケットの場合はそこでも激しくぶつかり合っています。パワーで押されることがこれまでは多かったです。しかし今は、特にリバウンドでは、スクリーンアウトを徹底しながらリバウンドをしっかり奪うことを心がけています。落ちてくるボールを競わないで、スクリーンアウトで押し合いながら落ちたボールを拾うのが日本にとってはナイスリバウンドになります。相手は背が高く、後ろから手が伸びてボールを獲られてますので、競い合う状態になったらボールを弾くように選手には指導してきました。
─ 世界選手権得点王であり、チームの大黒柱である藤本選手をどう評価していますか?
どの国と対戦しても藤本選手を徹底マークしてきます。当然ながらそのマークに合ってもシュートを決めますが、最近は相手を引きつけておいてから味方へパスを出すこともできるようになってきました。チームの目標としているパッシングゲームができるようになってきたのは、藤本選手がマークを引きつけてくれることが大きいです。
─ 藤本選手以外の選手の成長はどう感じていますか?
初選出した豊島選手は小さいですが、ものすごいスピードがある選手です。彼は生まれつき障害を持った選手ですが、車椅子の操作は素晴らしいものがあります。震災時は福島第一原発で働いていたこともあり、他の選手たち以上に負けられないという強い気持ちを持っています。若い選手の中では一番期待しています。
─ 今年、開催地でもあるイギリスとは海外遠征で何度も対戦しています。残念ながら勝つには至っていませんが、自信のほどは?
負け惜しみになるかもしれませんが、予選リーグ同組ということもありスカウティング合戦というような探り合いの試合でした。しかし格上であることは間違いありませんし、勝つためには何とかしなければいけません。もちろん対戦できたことで、しっかりと手応えは感じています。
─ どの試合も厳しい戦いとなりますが、やはり目標の一歩手前となる準々決勝は厳しく難しい戦いになると思いますが?
正直言って厳しい戦いです。3位でも10位でも、僅差の戦いばかりで実力は変わりないのがパラリンピックです。何度も経験していますが、準々決勝で勝つと負けるとでは次の戦いへのモチベーションが全然違います。順位決定戦に回るのとメダルを賭けた試合に臨むのでは、戦い方も変わってきます。一瞬の間違いも許されない戦いであり、プレッシャーはものすごいものがありますが、良い選手ばかりですし、うまく機能させながら試合をすることを今から楽しみにしています。
─ 強いハートの部分では、日本代表としてのプライドはもちろん、宮城MAXが中心となる日本代表にとって震災もまた強い思いとしてあるのでは?
昨年の東日本大震災で被災し、あれ以上の悪いことはもう無いと私は思っています。あの未曾有の被害を体感したこのチームは、絶対に負けないという強い気持ちは持っています。今まで生きて来た中で、本当に最悪の状態でした。ロンドン2012パラリンピック・アジアオセアニア地区予選会(2011年11月2日~11日)が行われた韓国では、地元韓国に78-77の1点差で勝利をつかみ取り、パラリンピック出場を決めました。アウェイの環境の中ではありましたが、震災に比べればこんなことは何とも無いという感じで戦って来ることができました。言葉は悪いかもしれませんが、震災が力になっているのは絶対にあります。