現地レポート

終わりは始まりの合図RSS

2014年03月30日 20時48分


「東日本大震災復興支援 第27回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会(ジュニアオールスター2014)」は、男子が大阪府、女子が福岡県の優勝で幕を閉じた。大阪府は11年ぶり2度目、福岡県は4年ぶり7回目のジュニアオールスター制覇である。この大会は、連日書き記しているとおり、勝ち負けもさることながら、より高いレベルのバスケットを体感し、さらなる高みを目指す、いわばステップアップのための大会である。試合に勝ったチームや選手はもちろん、たとえ負けたとしても、「いい経験ができた。次につなげたい」と思えれば、それは「勝ち」と言っても過言ではない。


 



「今年のチームの特長は小さい選手のひたむきさです。そのひたむきさが、優勝候補の一つでもあった愛知県のガード陣を嫌がらせて、勝利につながったのだと思います」


そのように言うのは福岡県女子の山崎 修コーチである。予選リーグを突破できるのは、それぞれの組の1位だけ。その予選で優勝候補の福岡県と愛知県が対戦することになったのは、中学女子バスケットファンからすれば「もったいない」ことだが、抽選の結果だけに仕方がないことでもある。そうして山崎コーチに鍛え上げられた小兵たちのオールコートディフェンスは、大会6試合目となる決勝戦でも衰えることがなかった。それが福岡県の勝因だと言っていい。


ただそうした小兵だけではなく、ビッグマンも激しい山崎流のバスケットにしっかりとついていった。これもまた見逃してはならない。


最優秀選手となった橋口 樹選手は、試合中でも厳しい言葉で選手を鼓舞する山崎コーチについて、こう言っている。


「昨年も福岡県選抜に選んでいただいたのですが、昨年は山崎コーチの大きな声にビクビクしていました。でも山崎コーチほど私たちのことを本気で怒ってくださる方はいないと思ったら、今年は山崎コーチの言葉を素直に受け入れようと思って、練習にも取り組むことができました」


その結果が、自分たちの中学校ではあまり使わないオールコートプレスディフェンスで、しっかりと足を動かして、スティールなども狙えるようになったのだ。これは所属チームだけでは身につけられなかったことかもしれない。


バスケットの技術だけではない。


「今年のチームでは多くの方に支えられていることが実感できました。試合のビデオを撮ってくださる保護者の方や、毎日相手チームの研究をしてくださるコーチなど、本当に多くの人たちに支えられて優勝ができたと思います」


ジュニアオールスターを通して、こうした感謝の気持ちを学べたことも橋口選手にとっては大きな財産である。


 



橋口選手と同じように、男子の最優秀選手となったのが、石川県の大倉 颯太選手である。類まれな1対1の能力を持ち、シュートも確実、それでいて自己中心的なプレイをせずに味方のゴールも演出できる、まさに今大会ナンバーワンといってもいい選手だった。


しかし結果は準優勝。決勝戦の前半は大阪府の徹底したフェイスガードに動きを封じられ、後半はそれがほどけたものの、やはり大阪府のチームディフェンスに苦しめられた。それでも大倉選手は、今大会を通じて自分の成長を強く感じることができたという。


「精神面で成長できたと思います。黒島(啓之)コーチからも言われましたが、フェイスガードにイライラして、自分がキレてしまったらチームの雰囲気も悪くなってしまいます。1人でバスケットをするのではなく、仲間を信じて、声をかけたり、落ち着いてやろうって思っていました。結果は負けてしまいましたが、その点では我慢ができたし、成長できたと思います」


1対1の攻撃力がある、いわゆる「エース」と呼ばれる選手は、常に相手チームの厳しいマークを受けることになる。ボールを持たせてくれないことはもちろん、やっとのことでボールを受けても5人のディフェンスが一斉に自分のほうを向いてくる。簡単にゴールを奪うことはできない。


そうなれば大人であってもフラストレーションが溜まるのだから、中学生ではなおのこと精神的にイライラして、悪い方向に転べば、自分勝手なプレイに走ってしまうことだってありうる。それをなんとか黒島コーチが話して聞かせ――実際にハーフタイム中、黒島コーチと大倉選手が2人で話し込んでいた――、大倉選手は最後までチームメイトとともに戦い抜くことができたのである。


負けてもなお、そうした経験を積めたことが大倉選手の今後につながらないはずはない。


 



「優勝した実感はまだ湧きませんが、ジュニアオールスターの結果に満足することなく、この経験を生かし、反省点を糧として、一層の成長をしたいと思います。そして折尾中で全中(全国中学校バスケットボール大会)優勝をしたいです」


優勝した女子福岡県の橋口選手がそう言えば、決勝戦で敗れた石川県男子の大倉選手はこう言う。


「負けたことはもちろん悔しいですが、(野々市市立)布水中学校として全中で優勝するための課題が見つかったと思います」


2013年度の中学バスケット最後の大会は、2014年度の始まりの合図でもある。勝った喜びや自信、負けた悔しさや反省、力を出せなかった自分への憤り、そうした今抱えているさまざまな思いを、全国の中学生たちには春から夏にかけてぜひ昇華させてほしい。彼ら、彼女らの進化はまだまだこれから加速するのである。


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成長をつづけるジュニアオールスターたちRSS

2014年03月29日 23時19分


「東日本大震災復興支援 第27回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2014」は第2日目を終え、男女のベスト4が出揃った。男子は大阪府、福岡県、石川県、山口県。女子は広島県、北海道、兵庫県、そして福岡県である。


 



ジュニアオールスターに出場してくる選手たちは、各都道府県で認められた、中学生としてはトップレベルの選手たち。とはいえ、まだまだ中学生。身体的にも、精神的にも、もちろんバスケットの技術的にもまだまだ発展途上にある。だからこそ彼ら、彼女らは「もっともっとうまくなりたい」と日々の努力を重ねている。


決勝トーナメントの1回戦で敗れはしたが、徳島県女子のエース、藤本 愛瑚選手は昨年もジュニアオールスターに出場している。ただ昨年は何もできないままに試合を終えていた。その悔しさが残っていたのだろう、今回はチームの目標である「決勝トーナメント進出」に、文字どおりエースとしての活躍で貢献している。


「この1年間、3Pシュートを確実に決めるように練習してきました。特にパスをもらったらすぐにシュートを打つことを意識していて、それはできたと思います。シュートも入ったし、よかったです」


きょうの神奈川県との対戦では2本の3ポイントシュートを含む、両チームトップの19得点を挙げており、藤本選手は2度目のジュニアオールスターで、昨年からの成長を感じたようだ。


その一方で、もう1つ、昨年からの課題だった「インサイドでのポストプレイ」については、うまくできなかった。練習を重ね、自分としては「得意」になったつもりだったが、やはり全国の舞台はそう簡単に通用するものではない。もっともっとレベルを上げなければいけないと実感したことだろう。


でも、それでいいのではないだろうか。「すぐにできる選手は、すぐに忘れてしまう」といわれるように、簡単にできないからこそ、自分なりの工夫を加えていけば、それは将来的な武器にもなりうる。もちろん、今回うまくいった3Pシュートも同じである。


レブロン・ジェームズ(NBA / マイアミヒート)が好きだという藤本選手は「2020年の東京オリンピックにも選ばれたい」と意欲を見せている。現在14歳。6年後は20歳。日本の女子バスケット界をひっぱる「キング」となりうるのか。この1年間の成長に拍手を送りつつ、今後一層の成長を期待したい選手の1人である。


 



藤本選手のような個々の成長もさることながら、チームとして、この数か月で劇的な成長を遂げたのが、15大会ぶりにベスト4に入った山口県男子である。山口県はけっして「バスケットが盛ん」と胸を張れる地域ではない。「全体的に背も低いし、技術も高くはない」と中村 高之コーチも認めている。それでも「オールラウンドにできる選手は2人くらいで、あとは彼らが持っている個性…速く走るとか、シュートが入るといった、1つしかない個性を生かしながら、それぞれが役割を果たすようなチームつくりをしてきた」と言う。


そうして常日頃から「チームのために」ということを言い続けてきて、それが今大会のために東京に入ってから、目に見えるほど周りに気配りができるようになったと中村コーチは驚く。そんな人としての成長がベスト4進出につながったというわけである。


選手自身も、チームの成長を感じているようだ。数少ないオールラウンドプレーヤーの1人、江木 亮太選手は言う。


「チームのモットーが『明るく元気なチーム』なんですけど、初めのうちは暗かったんです。でも練習から盛り上げるようにしてきたし、試合を重ねるごとに絆も深まって、チームが1つになったように思います」


江木選手自身も、所属するチームでは負けそうになると「諦めてしまって、周りに声をかけることもできなかった」そうだが、選抜チームでは負けそうになっても周りの選手が声をかけていることを体感して、今では「強いチームと対戦して、競り合いになればなるほど勝ちたいと気持ちを強く持てるようになったし、声もかけられるようになりました」と言っている。


ジュニアオールスターは1つの中学校から最大4人までしか出場できない、文字どおりの選抜チームである。でも、だからこそ、他校の選手から学べることもあるわけだ。



さまざまな成長を見て取れるジュニアオールスター。毎日2試合ずつを戦っていけば、おのずと体力は奪われていく。いくら中学生が若いといっても、やはり動きは少しずつ失われていくものだ。だがそれはすべてのチームに共通の条件でもある。どのチームも体力的に厳しい。しかし2日間を勝ち抜いたという自信が、彼ら、彼女らにとってはさらなる成長の糧となる。勝ち残った8チームには、成長した自分やチームメイトを信じて、最終日を精いっぱい戦ってほしい。


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初めてだからこそ――RSS

2014年03月28日 23時31分


本日開幕した「東日本大震災復興支援 第27回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2014(ジュニアオールスター2014)」。初日の今日は東京・東京体育館を中心として、神奈川、千葉、埼玉の計6会場で予選リーグの96試合が行われた。出場した全チームはこの日のために練習を重ねてきたといっても過言ではない。しかし勝負とは非常なもので、明日の決勝トーナメントに進めるのは男女各16チームのみ。残りの男女各32チームは一足先にチームを解散しなくてはならなくなった。


 



しかし敗れたとはいえ、その32チームもまた、勝ち残った16チームと同じくらいかけがえのない経験を積んだに違いない。


たとえば男子の福井県。初戦の島根県とのゲームは“トリプルオーバータイム”、つまり3度の延長戦までもつれ込むビッグゲームとなった。前半こそ福井県のペースで進んでいたのだが、終盤に追いつかれて、1度目のオーバータイムへ。そこでは追いついた島根県がペースを握ったのだが、今度は福井県が粘りを見せて、2度目のオーバータイムへと持ち込んだ。そこでも決着がつかずに、3度目のオーバータイムに進んでいる。


福井県のキャプテン#4 二上 燿選手も、島根県のキャプテン・#4 福島 洸星選手も「トリプルオーバータイムは初めて」と言う。それはそうだろう。トリプルオーバータイムなど、そうそう見られるものではないのだから。


オーバータイムでは互いに「絶対に負けない」という一心で戦っていたが、二上選手の言うとおり「リバウンドを取られたことと、シュートミスが多くなったことが敗因」となった。実際には島根県もシュートミスをしていたのだが、福島選手曰く「すごく緊張感のある3つのオーバータイムでしたが、そこで勝つには精神力や集中力などが絶対に必要になると思っていました。その点で福井県を上回ったのだと思います」


二上選手が在籍する福井市立明道中学校は、現時点で福井県1位のチームだという。二上選手は今回の敗北に悔しさを抱えつつも、次なる目標、全中(全国中学校バスケットボール大会)出場へと目を向けていた。


「自分のシュートミスが多かったので、これからは練習のときから、試合で通用するシュートの練習をしたいと思います」


ゲームは何が起こるかわからない。試合終了まで集中してシュートを決めきる精神力や集中力の必要性を、二上選手をはじめ、福井県の選手たちは学んだはずである。


 



初めてといえば、女子の奈良県のキャプテン・#4 板倉 奈々選手はジュニアオールスター2014が初めての全国大会だという。そういう選手はほかにも数多くいるだろうが、ともかく全国大会に初めて立った板倉選手が引っ張る奈良県は、埼玉県と宮城県にそれぞれ敗れて、予選リーグ敗退となった。


「埼玉県は今日の会場(さいたま市記念総合体育館)が地元ということで応援がすごかったですし、出てくる選手がみんな強かったです。宮城県はディフェンスがうまくて、でも1試合目の埼玉戦を観客席で見ているときに『宮城県は1試合目だからあれだけ動けるのだろう』と思っていたら、2試合目になる奈良県との試合でもディフェンスの足が動くし、外のシュートも入るし、やっぱり全国のチームはすごいんやなって思いました」


板倉選手の在籍する奈良市立若草中学校もまた、現時点で奈良県1位のチームだと言うが、それでも上には上がいるということを、直接その肌で知れたことは板倉選手をはじめ、奈良県の選手たちにとっては大きな財産である。


さらに板倉選手はキャプテンとして、県内ではライバルである仲間たちをまとめる難題にも今日までしっかりと取り組んできた。


「コーチに怒られて、みんなが落ち込んだときにテンションを上げるのには苦労しました。でも普段はライバルチームの子たちと一緒にいろんなことをしゃべったり、シュートが決まったときにワーッと言えたりしたのはすごく楽しかったです」


結果は残念なものだったが、試合だけではなく、そこに至るまでの約20回の練習(高校生との練習試合を含む)で得た、いろんな選手と一緒にバスケットをする楽しさは、彼女たちにとって、これからもバスケットを続けるうえでのモチベーションになるだろう。


 



初めてのトリプルオーバータイム、初めての全国大会、初めての選抜チーム――初めてだからこそ心に強く残る経験を、敗れた男女各32チームの選手たちには、今後に生かしてもらいたい。


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