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JBAが実施する育成改革について -運動部活動ガイドラインを受けてJBAのスタンス-
2018年5月15日
当協会(JBA)では、2017年度より日本バスケットボール協会は育成世代の改革に取り組んでいます。この改革が「なぜ行われることとなったのか」、「何について取り組んでいるのか」、「どのような手順で行われるのか」について皆様の理解を深めていただきたく、ご紹介します。
また、スポーツ庁より発表された「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を受けたJBAの考え方も併せて記します。
1. なぜ育成改革が行われることになったのか?
(1) 理由
JBAの理念に掲げた「バスケットボールで日本を元気にする」を育成世代にて実現することが大切であり、育成理念においても「バスケットボールを行う子どもたちの幸せを追求すると同時に、社会を元気にすること」を挙げています。
そのためには、強化と普及の両面を考えなくてはなりません。強化的には、「世界基準のバスケットボールを日常に取り入れる」ことにより将来の代表が世界で活躍できることを目指します。一方、普及的側面においては、「バスケットボールを楽しみ、愛していただくファミリーをさらに増やす」ことを目指します。
これらの達成のために育成世代に掲げられた課題は、以下のような点が挙げられます。
(2) 課題
①日本の指導方針が見えない
②育成が不十分である
➣トーナメント文化で試合数が少ない
➣成長スピードが遅い
➣能力別に力を発揮する場が不足している
③ 2018年度から新しい環境が生まれることによる対応
➣クラブ登録の開始
➣BリーグU15ユースの義務化の開始(男子のみ)
④ 選手発掘の道筋が分かりにくい
⑤ 育成世代の勝利至上主義が強すぎるきらいがある
➣成長期に適した指導フィロソフィではない
「世界基準のバスケットボール」「バスケットボールを楽しむファミリーを増やす」ことを達成するためには、まずこれらの課題を解決することが必要です。そこで、これら育成の課題を解決するための考え方が「育成方針」として挙げられ、その方針の具現化のために次の4つの施策を解決策として提案することとしました。
2. 育成改革は、何について取り組んでいるのか?
(1) 4つの施策
①習熟度別指導内容の整理・育成コーチングの周知
②育成センターの設置
③リーグ戦制度導入
④大会整備
※ミニ(U12)と中学(U15)においては、2015年度よりマンツーマン推進にも取り組んでいます。
2017年度より上記4つの施策を提案し、具現化に向けて動き始めています。
3. 育成改革はどのような手順で行われるのか?
(1) 2017年度育成改革に向けた手順
① 2016年8月~
育成改革の準備を開始。準備チームを結成し、将来構想としての育成世代の課題をまとめ、
育成方針を作成。育成改革施策検討のために月数回の会議を実施
② 2017年2月
骨子案取りまとめ
③ 2017年5月
都道府県バスケットボール協会(以下、PBA)専務理事に対する育成改革の方針説明実施
④ 2017年9月
PBAのユース育成担当者に対する育成改革(育成センター・リーグ戦)に関する説明実施
⑤2017年 11月~12月
PBAのアンダーカテゴリー部会担当者(U12/U15)、アンダーカテゴリー担当者(U18)に対する、
リーグ戦に関する説明実施
⑥ 2018年1〜2月
ブロックエンデバー開催時、U14/U16ユース育成コーチに対する育成センターについての説明・
意見交換実施
⑦ 2018年3月
PBAのU12/U14/U16ユース育成コーチに対して、育成センター伝達講習会を実施
*2018年度は準備年度・実施推奨年度です。
*2019年度はU12/U14/U16育成センター・U15リーグ戦ともに実施をお願いする年度です。
U12/U18リーグ戦は2020年度実施でよいとしています。
*育成センター・リーグ戦ともに日程調整・人員配置・予算措置等の準備が必要です。
これを執り行う組織作りも必要です。
*上記についてPBAに対する準備のお願いをしています。
(2) 大会整備について
①2019年度3月 U15ジュニアウインターカップ(仮称)プレ大会実施予定
②2020年度12月 U15ジュニアウインターカップ(仮称)第1回大会実施予定
*ジュニアウインターカップ(新設・仮称)とは、部活チーム・クラブチーム・Bクラブユースチーム(男子のみ)のすべての登録チームが出場できる大会です。
4. 運動部活動ガイドラインを受けて、JBAのスタンスについて
2018年3月にスポーツ庁より「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(以下、ガイドライン)」が発表されました。社会における少子化・複雑化・多様化によって、持続可能な運動部活動の在り方を見直す趣旨で作成されたガイドラインで、その内容には「休養日・活動時間の制限」が記されています。
JBAは上記の通り育成センター・リーグ戦の設置を提案しています。これに対して「部活指導に携わる教員の負担を軽減するためにガイドラインが作られているのに、この動きに逆行する施策ではないか」という声も届いています。JBAの理念は「バスケットボールを行う子どもたちの幸せを追求すると同時に社会を元気にすること」のため、携わっていただく方を不幸にすることは、言うまでもなく本望ではありません。
これまでバスケットボールは、学校部活動において競技力向上が図られてきたといっても過言ではありません。しかし、今後はこのガイドラインにより、学校部活動の活動縮小は否めない現状です。そこで「意欲の高い指導者」「意欲のある選手」が活動できる場所を確保することが求められます。その対応策施策が、いまJBAが準備する育成センター・リーグ戦であり、クラブチーム登録を認めることです。
JBA・PBA主催事業は「社会教育活動」としての位置づけであり、学校教育活動とは区別されるものと考えます。また、「社会教育活動の推進」についてはガイドラインにも記載されており(*別1)、JBAが準備していることとガイドラインが示している方向性は同じだと捉えています。
この実現のために必要な体育館の確保については、文部科学省・スポーツ庁ともに学校開放を推進する考えをガイドラインにも盛り込んでおり(*別2)、今後実現に向けて努力していただける方向であることを確認しています。また、都道府県に向けても「できる限りのことで、実情に応じてご準備をいただきたい」とお話をさせていただいています。
JBAが進める育成改革は育成理念を実現するためであり、指導者・選手・家庭が不幸になるために行うものではありません。これを考慮しながら、育成課題を解決するための育成改革施策については、実情を鑑みながら実行を図っていかなければならないと考えています。
ガイドラインは「やり過ぎる指導」「やらされる部活」に対しての警告です。バスケットボール界としても、指導者自らが行う指導が子どもたちの日常・成長にプラスとなっているかを改めて見直す機会となります。そのためには練習効率を高めたり、科学的知見を取り入れたりし、成果の上がる指導を常に模索していかなければなりません。
JBAは指導内容に参考となるもの(習熟度別指導内容)を整備し、登録コーチに閲覧頂けるように準備します。中学部活動の指導手引きも作成中です(2018年9月までに発表予定)。また、育成世代のコーチングの参考となる資料も準備しています。指導者である大人が子どもたちの笑顔のために、常に学び続ける姿勢を忘れず、よりよい在り方を模索し続けなければなりません。
JBAとしてはガイドラインを前向きに捉え、「やればやっただけ結果が出る」という考えを変え、「スポーツの在り方・与え方」を再構築する時が来たと皆様にも意識していただきたいと考えます。
スポーツ界・バスケットボール界の大きな転換期であり、マインドセットを再構築することも求められます。これまでよかったことは何か、改善すべきことは何かを指導者それぞれにしっかりと考えていただき、子どもたちのために活動してほしいと考えます。JBAはその助けとなっていきます。
皆様のご理解とご協力をお願い致します。
【別1:ガイドラインp.8 終わりに】
「また、競技団体は、競技普及の観点から、運動部活動やジュニア期におけるスポーツ活動が適切に行われるために必要な協力を積極的に行うとともに、競技力向上の観点から、地方公共団体や公益財団法人日本体育協会、地域の体育協会とも連携し、各地の将来有望なアスリートとして優れた素質を有する生徒を、本格的な育成・強化コースへ導くことができるよう、発掘・育成の仕組みの確立に向けて取り組む必要がある。」
【別2:ガイドラインp.7 地域との連携等】
「ウ 地方公共団体は、学校管理下ではない社会教育に位置付けられる活動については、各種保険への加入や、学校の負担が増加しないこと等に留意しつつ、生徒がスポーツに親しめる場所が確保できるよう、学校体育施設開放事業を推進する。」