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2023年度バスケットボール女子日本代表チーム 強化・活動方針発表
2023年5月11日
強化・活動方針を発表した恩塚亨ヘッドコーチ(左)と東野智弥JBA技術委員長
パリ2024オリンピックへ向けて出発した女子日本代表チーム
2023年度バスケットボール女子日本代表チームは、5月8日(月)より味の素ナショナルスポーツセンター(東京都北区)にて第1次強化合宿がはじまり、新たなスタートを切りました。
本日5月11日(木)には多くのメディアの方にお集まりいただき、東野智弥JBA技術委員長と恩塚亨ヘッドコーチによる今年度の強化・活動方針発表記者会見を開催。前年のFIBA女子ワールドカップ2022の総括、6連覇を懸けた6月26日(月)からオーストラリア・シドニーで開幕するFIBA女子アジアカップへ向けた女子日本代表候補選手の発表、パリ2024オリンピックへ向けたマイルストーンなどについて発表しました。
今後の強化の成果を試す「三井不動産カップ2023」はデンマーク代表を迎え、6月16日(金)~18日(日)に高崎アリーナにて行われます。チケットは5月13日(土)10時より一般販売されます。
■2023年度 国際大会スケジュール
「FIBAアジアカップ2023」(2023年6月26日~7月2日)
「第19回アジア競技大会」(2023年9月23日~10月8日)
「パリ2024オリンピック 世界最終予選(OQT)」(2024年2月4日~12日予定)
■JBA技術委員長 東野 智弥
金メダルを目指した昨年のFIBA女子ワールドカップ2023は、9位に終わりました。ベスト8は確実だろうと高をくくっていた私の責任です。今年はFIBA女子アジアカップがあり、パリ2024オリンピックへ向けた出発の年になります。現在、日本のFIBAランキングは9位。1位のアメリカが抜きん出ていますが、逆に2〜12位くらいまでは力が拮抗している状況です。
昨年のFIBA女子ワールドカップを振り返ると、課題は4つ。
1つ目として、恩塚ジャパンは東京2020オリンピックで通用したバスケを精査し、手間をかけずに良い場面でシュートを打ち、それを決め切ることを目指していました。しかし、相手に対応され、日本の強みであるポイントガードに最初からボールを持たせない厳しいディフェンスをしてきました。
2つ目に、日本のお家芸というべき3ポイントシュートですが、そこにヘルプディフェンスが行きませんでした。手間をかけないスタイルに対し、ポイントガードがゴールへアタックしましたが、相手は高身重な選手が揃っており簡単には決められませんでした。1on1を単発に仕掛けてしまい、ボールを動かしてフルコートで戦う本来のスタイルになっていなかったのが課題です。しかし、強化試合までは、手間をかけないスタイルも機能していたと評価しています。
3つ目は戦略戦術の見直しを、FIBA女子ワールドカップで見えた課題も含めて取り組まなければなりません。身体能力もシュート力も高い相手に対して、どう戦っていけば良いかを考えることに時間を要しましたが、再出発に向けて良い見直しができ、そして良い戦略が立てられたと思っています。
4つ目の課題として、タイムシェアの方法です。恩塚ヘッドコーチは東京医療保健大学で5連覇しましたが、長くチームを作っているときにはさほど問題ではありませんでした。しかし、日本代表でのタイムシェアという選手起用法に対して、選手がそれをかみ砕く時間が足りませんでした。そこは課題であり、選手のベストパフォーマンスを見極めて、もちろんタイムシェアはしますが、その方法を変えていきます。
銀メダルを獲得した東京2020オリンピックと比較し、FIBA女子ワールドカップでは日本の課題であるリバウンドとインサイドでのポストアップに対するディフェンスの向上が見られました。
6月26日(月)より開幕する「FIBAアジアカップ2023」はパリ2024オリンピックへ向け、非常に重要な出発の大会になります。同時に、6連覇が懸かっています。FIBA女子ワールドカップ準優勝の中国、ホームのオーストラリアは3位のメダルを獲得したチームと対戦しなければならず、簡単ではありません。FIBA女子アジアカップのベスト4が、来年2月に開催される「パリ2024オリンピック 世界最終予選(OQT)」へ進みます。16チームが4グループに分かれ、上位3チームがオリンピック出場権を得ることができます。
■女子日本代表ヘッドコーチ 恩塚 亨
昨年のFIBA女子ワールドカップで「日本のバスケットボールを前に進めたい」という思いで臨みました。しかし、それは叶えられず、選手を勝利に導くことができませんでした。その悔しさを糧とし、2023年度強化をスタートさせました。再チャレンジへの道筋をご紹介させていただきます。
チームキャプテンは林咲希選手。チームに活力を与える存在であり、私たちのあるべき姿を背中で見せてくれています。キャプテンとともに新たにポジションリーダーとして、ポイントガードの町田瑠唯選手とセンターの髙田真希選手を選出。目的は、各ポジション毎に意見交換や選手間同士の課題解決をする機会を創出し、また選手とコーチのパイプ役になってもらいます。より選手同士やコーチと選手が、同じページでチーム一体となって戦うことを目指して設置しました。
「40分間 世界一のアジリティを発揮し抜くこと」
FIBA女子ワールドカップで得られた課題の克服と、日本の強みをさらに強化するための3つのポイントを考えました。
①ポジショニング力:体格差を克服
日本の強みはスピードであり、アジリティです。そのスピードの質を高めた言葉となる「ポジションニング力」。よりスピードを出す目的を明確にし、なぜ速くしなければいけないのかという目的を込めて、ポジショニングにこだわっていきます。
・ポジションニング力 → 良いポジションを先取りして、有利な状態で戦う力
・体格差で劣る日本が横並びの勝負をしても勝てない → 有利な勝負の場数を増やすことが狙い
これらにより、高さやフィジカルを凌駕することを目指します。これまで以上に、愚直なまでにこだわってやり抜くことで日本の強みを発揮し、体格差を克服するカギとなります。
②日本の強み封じへの対応:3つの強化システム
日本のスピードあるペイントアタックに対し、相手はゴール下と3ポイントシュートのディフェンスを厚くしてきました。それに対する3つの強化システムが以下の通りです。
1.ペイントアタックの質を改善システム
ペイントアタックの質をより高めていく必要があります。
2.3ポイントシュートをチャンスを生み出すシステム
絶対に3ポイントシュートを打たさないようなディフェンスを超えていく必要があります。そのために、ディフェンスの対応が難しくなるような常識を覆す動きで、3ポイントシュートを決めていきたいと思っています。
3.プレーを壊しにくるディフェンスを超えるシステム
体格差を利用して身体をぶつけてプレーを壊しにくる相手に対して、クリエイティブで連続性のあるプレーを発揮できるように強化しています。
③カオスを制する戦い
昨今の世界の主流であり、日本に対するバスケは開始5分でセットプレーの読み合いは終わり、その後はとにかくプレーは壊し合います。相手のプレーに対して、こう打開するという手法ではなく、そもそもそのプレーをさせない攻防が勝負となるのが現代バスケです。その考えを出発点にして強化を進めていきます。
カオスの中でいかに合理的な選択をし、それをチームとしてシンクロできるような力を高めていくこと。このチャレンジは、言われたことをすることに長けた日本人の課題でもあります。これを克服して、次の世界への扉を開くカギにしていきたいと考えています。
「個の力を最大化する」
個人では勝てないから、チームで戦おうと言いがちですが、私は個の力をしっかり引き出せるようにトレーニングしています。
・選手の強みを引き出せるように工夫するためのトレーニングやシステム
・コーチや選手、ポジションリーダーとの意見交換を活発化し、創意工夫しながら打開するためのカギの探求
・ポジショニング力(機動力)、シュート力、インテンシティー高い強度でやり抜ける力の3つを基礎的な力として強化
最後に21名の代表候補選手を選出し、全員に期待しています。