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【北海道インターハイ/現地レポート⑦】男子は日本航空が初優勝、女子は京都精華学園が大会連覇を達成

2023年7月30日

北海道・札幌市でおこなわれてきた「令和5年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(以下、インターハイ」は大会最終日。男女の決勝戦がおこなわれ、インターハイの優勝校が決まりました。
先におこなわれた女子決勝戦では、京都精華学園(京都)が桜花学園(愛知)を88-65で破り、インターハイ連覇を達成しました。続けておこなわれた男子決勝戦では、日本航空(山梨)が東山(京都)を76-60で破り、同校としてはもちろんのこと、山梨県勢としても初のインターハイ優勝を飾りました。

決勝戦まで勝ち上がってきたチームですから、実力は高いレベルで伯仲しています。勝因、あるいは敗因もけっして一つには絞られません。そのうえで勝敗を分けた一つの視点として適応力、いわゆるアジャストの力が挙げられます。

女子の部を制した京都精華学園の山本綱義コーチは、インターハイに一抹の不安を抱えていました。というのも、チームの柱である堀内桜花選手と八木悠香選手がそれぞれ「バスケットボール ウィズアウト ボーダーズ(BWB)」のアジアキャンプ(アブダビ・堀内選手)とグローバルキャンプ(ラスベガス・八木選手)に招待され参加したことから、インターハイ前のチーム練習に参加できない時期がありました。
「そのため、私たちの持ち味である『あうんの呼吸』のタイミング微妙に狂っていたんです。そのことを、大会を通して心配していました」
八木選手に関しては、大会の2日前に合流したと言います。

それでも初戦の対戦相手である岐阜女子(岐阜)を延長戦で退けると、その後も大阪桐蔭(大阪)、精華女子(福岡)、札幌山の手(北海道)、そして決勝戦の桜花学園と、実力のあるチームを次々と振り切っていきました。山本コーチは言います。
「心配はしていたものの、一方で私たちは中高6年の一貫教育という形でやってきています。選手同士の付き合いも長い分、多少戦列から外れたとしても、3~4日で呼吸は少しずつ元に戻っていくんだなという自信を持ちました。コンビネーションのところでいくつかのずれはありましたけれども、それを試合の中で修正しながら、合わせていこうという意識が生まれてきたことは大きな成長だと思います」

山本コーチをして「これまではシュートを打ちなさいと言ってもなかなか打てなかったのに、BWBを経験してからは積極的に打つようになった」という堀内は、前半に3ポイントシュートを1本沈め、桜花学園を混乱に落とし込んでいました。一方で後半は少しだけプレーを修正しています。
「相手のチームファウルなどを考えると、やはり私がもっとアタックしていったほうがファウルを誘えるし、ヘルプに出てきた留学生に合わせることもできます。やはり自分が崩していかないと、アウトサイドでパスを回しているだけだったら、桜花学園も守りやすくなると思ったので、今日は強い気持ちでプレーできました」
チームとしてアジャストしながら、選手個々もアジャストしていったことがインターハイ連覇につながったと言えます。

男子の部を制した日本航空は、立ち上がりにいきなり0-7と東山に走られてしまいます。山本裕コーチはタイムアウトで修正を図ります。
「選手たちが少しふわふわしていたので、それを告げたことと、一番はディフェンスのポジショニングやローテーションの修正をしました。これはいつものことで、昨日の開志国際(新潟)との試合でもそうでした。決勝戦の前夜もあまり細かくは指示をせず、相手の動きを見て修正していく。この繰り返しでやっていたので、それも少しうまくいってくれたところだと思います」

オフェンスについても、山本コーチが指揮を執り始めて、修正に取り組んできました。実は山本コーチは今春からチームの指揮を執り始めています。そのため戦略・戦術は原則的に前任のコーチの考えをそのまま踏襲しています。一方で早急に修正すべきと感じたスペーシングなどについては練習を重ねてきました。

「(初めて見たときは)スペーシングがあまり上手じゃなくて、ジェリー(オルワペルミ ジェラマイア選手)がディフェンスを引きつけるのですが、ほかの4人が全員ペイントエリアに飛び込んでいたんです。さすがにそれはよくないだろうということで、『コーナーをきちんと使うんだよ』、『スペースメーカーでこうだよ』という話をしてきました。関東ブロック大会のときはまだまだ力ずくで合わせていましたが、インターハイではスペースを広く作ってくれました」

コーチが替わって4か月足らずの日本航空が初の日本一に輝いたのは、そうしたコーチの細やかな修正と、それを素直に受け入れる選手たちのアジャスト能力の高さ、しかもゲーム中にそれをやってのけるバスケットIQの高さがあったからだと言えます。

6日間に渡って繰り広げられたインターハイは、男子が日本航空、女子が京都精華学園の優勝で幕を閉じました。しかし高校生による今年度の高校バスケットは、まだ始まったばかりです。東山と桜花学園を筆頭に、都道府県予選を含めて、この夏に敗れたチームがこれからどんな成長を遂げるのか。もちろん勝った両校もここで立ち止まることはありません。
U18日清食品リーグや、さまざまな試合を通して、お互いに切磋琢磨しながら、よりよいチームになっていくことが期待されます。
引き続き、彼ら、彼女らが高校バスケットにひたむきに向き合う姿勢に注目していただればと思います。