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【四国インターハイ/現地レポート⑦】男女決勝 – 諦めない姿勢が呼び込んだ四国インターハイの優勝 –
2022年8月1日
香川県高松市を中心とした「令和 4 年度 全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会 (以下、インターハイ)」も最終日を迎え、男女の優勝校が決まりました。女子は京都精華学園 (京都) が初めての、男子は福岡第一 (福岡) が 3 大会ぶり 4 度目の優勝を飾りました。
京都精華学園は 93-65 で大阪薫英女学院 (大阪) を破り、ウインターカップも含めて、文字どおり、初めての日本一です。チームを率いる山本綱義コーチは「チームがひとつになって戦う状況が、さまざまな事情でなかなか作れなかったのですが、インターハイに来て、ひと試合ごとにチームが成長してくれていることを実感しました。その結果として優勝をさせていただけたので、本当に嬉しいです」と勝利をかみしめます。
勝利のポイントは、チームが軸に置いているディフェンスでしょう。スピードを活かした多彩な攻撃が魅力の大阪薫英女学院を 65 点に抑え込みました。序盤こそ、緊張からかディフェンスでの連携がうまく取れず、大阪薫英女学院に気持ちよくプレーされていましたが、タイムアウトで修正をすると、その後は大阪薫英女学院に大きな流れを作らせません。
一方のオフェンスでチームを引っ張ったのは、キャプテンでもある #4 イゾジェ ウチェ選手です。ひとりで46得点 (リバウンド19本、ブロックショット10本のトリプルダブルを達成) を挙げています。フィールドゴール成功率は脅威の91.6% (24本中22本成功)。ウチェ選手は「ファウルだけは気をつけました。私がファウルアウトをしたらチームが困るから、そこは意識していました」と振り返ります。
留学生としてコンビを組む #15 ディマロ・ジェシカ選手が大会中にケガを負い、コートに立てなくなったため、ウチェ選手としてもいつも以上にファウルには気をつけたようです。
しかし相手はスピードと運動量で勝負してくるチームです。体力は必然的に削られていきます。実際にウチェ選手は体力的に厳しかったことを認めています。しかし、ウチェ選手はこう言います。
「コーチから『ウチェ、できるよ』と言ってもらって、私もきょうの試合がインターハイの最後の試合だから頑張ろう……自分でも『ウチェ、できるよ』と思って、頑張りました」
山本コーチはウチェ選手をキャプテンに指名した理由を「日本の文化や日本人の心をよく理解してくれているので、彼女のプレー面と精神面が成長すれば、チームがもっと成長すると思っていたから」だと言っています。日本人が持つ “ 耐える精神力 ” を理解し、彼女自身もそれを身につけたからこそ、きょうの全国初優勝に結びついたのでしょう。
福岡第一は残り 5 秒、今年度の U16 および U17 日本代表としても活躍した #17 崎濱秀斗選手が逆転の 3 ポイントシュートを沈めて、開志国際 (新潟) を下しました。最終スコアは 77-76 です。
「私も予想していなかった 3 ポイントシュートです」
崎濱選手のラストショットをそう振り返ったのは、福岡第一の井手口孝コーチです。崎濱選手は 7 月上旬まで「FIBA U17 ワールドカップ」に出場していたため、チームメートと合わせる時間が少なく、今大会は「チームとあまりフィットできていない」と井手口コーチは言っていました。
それは決勝戦でも大きく変わることはありません。ゲーム展開としても第 2 クォーター以降、徐々に流れを開志国際に奪われていきます。福岡第一が得意とするオールコートでのプレスディフェンスも開志国際に跳ね返され、なかなかリズムに乗りきれません。しかしキャプテンの #8 轟琉維選手が認めるように、「最後まで諦めない気持ちが全員にあった」ことが、残り約10秒、2 点ビハインドでの最後のプレーにつながっていきます。
プレスディフェンスを仕掛けた福岡第一は、#29 城戸賢心選手が相手のパスを手に当て、ボールを奪います。そのボールを受けたのは轟選手。自分でシュートを打つ選択肢もありましたが、「思っていた以上にディフェンスがボクのほうに寄っていたので、コーナーで待っていた崎濱に『彼なら決めてくれるだろう』と思ってパスを出しました」。
そのパスを受けた崎濱選手は「正直、(轟) 琉維さんが最後のシュートは打つだろうと思っていました」と振り返ります。ただ、もしパスが来たらシュートを打てる準備だけはしておいたほうがいい。そう思っていたところに、「琉維さんから正確なパスが来たので『決めてやろう』という気持ちで打ちました。打った瞬間に入るとわかるほどの感覚でした」。
優勝を決めるラストショット。しかし打った本人は冷静にこう振り返ります。
「最後のシュートを決めたのは自分ですが、自分のそのシュートだけでなく、周りのチームメートがそれまでにたくさんスコアしてくれて、琉維さんも足が痛いなかでチームのためにやるべきことをちゃんとやってチームを救ってくれたので、琉維さんや周りのメンバーに感謝しています」
福岡第一の選手たちが最後まで諦めなかったのは、逆転の 3 ポイントシュートが決まるまでの39分55秒をチームみんなで紡いできたという自信が、選手それぞれにあったからでしょう。
女子の京都精華学園にせよ、男子の福岡第一にせよ、もちろん敗れた大阪薫英女学院や開志国際も含めて、どんなに苦しい状況であったとしても、チームとして戦うことに誇りを持っていたからこそ、スコア以上に素晴らしいゲームを展開できたのでしょう。
四国インターハイ2022はこれで終わります。ここからは12月のウインターカップに向けて、各チームがより密度の濃い練習に入っていきます。その間には今年度から始まる「U18日清食品リーグ」もあります。インターハイで得られたさまざまな経験を、そうしたリーグ戦や練習試合などを通して、よりよく昇華させることで、ウインターカップは一段と質の高い戦いになっていくでしょう。高校生たちの熱い戦いはまだまだ始まったばかりです。