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【四国インターハイ/現地レポート⑤】男女準々決勝 – 迷いなきチャレンジャー、藤枝明誠が8大会ぶりのベスト4進出 –

2022年7月30日

 香川県高松市を中心とした「令和 4 年度 全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会 (以下、インターハイ)」の大会 4 日目が終わりました。この結果、今夏の男女ベスト 4 が、以下のとおりに決まりました。

男子 福岡第一 (福岡)
   藤枝明誠 (静岡)
   中部大学第一 (愛知)
   開志国際 (新潟)

女子 京都精華学園 (京都)
   八雲学園 (東京)
   東海大学付属福岡 (福岡)
   大阪薫英女学院 (大阪)

 男子は 4 校中 3 校がインターハイでの優勝を経験しています。それどころか近年の 3 大会をその 3 校 (近い順から中部大学第一、福岡第一、開志国際) が勝ち取っているのです。唯一、優勝経験がなく、またベスト 4 に入ったのも 8 大会ぶりなのが藤枝明誠です。
 しかしきょうの藤枝明誠はメインコートにも動じることなく、堂々とした戦いぶりを披露していました。やはりインターハイ優勝経験のある北陸 (福井) を相手に、前半こそ同点で終えていますが、後半だけで62得点。一気に突き放して、100-75 で勝利しました。その立役者は 2 年生エースの #12 赤間賢人選手と、シューターの #23 霜越洸太朗選手です。赤間選手が38得点、霜越選手が 3 ポイントシュート 7 本を含む25得点。2 人だけで63得点をあげているのです。

「あの子たちは普段から決めるんですけど、今日も集中していたんですね。よく入りました」
 そう振り返るのはチームを率いる日下部二郎コーチです。チームのベースはハードなディフェンスからのファストブレイクですが、ハーフコートオフェンスに関しては 「シュートチャンスを逃さないってこと」に重きを置いていると言います。
「高校生って、さまざまなセットプレーを覚えていくと、自分が打てるのに、つい次のプレーを探してしまうんです。練習ではそうすべきときもありますが、試合でそれが出ないようにしています。今日の彼らには迷いがなかったですね。シンプルに『守って走る』というチームスタイルにだけこだわれば、シュートの迷いは減ってくものなんです」
 日下部コーチのその言葉どおり、オンボール、オフボール、それぞれのスクリーンを使ったさまざまなオフェンスを展開しながらも、赤間選手にせよ、霜越選手にせよ、もちろん他の選手たちもシュートにまったく迷いがありませんでした。その迷いのなさが結果につながったのでしょう。
 加えて、「リバウンドに入ること」も常日頃から言っているそうで、霜越選手も「前半はあまりシュートを打つチャンスがなかったんですけど、後半はしっかり自分のタイミングで打てて、それが入る結果につながりました。もし入らなくても仲間がリバウンドを取ってくれていたので、仲間を信頼して思い切りシュートを打つことができました」と認めています。つまり彼らは自分たちの日ごろの成果を出し切って、勝利をつかみ取ったのでしょう。

 一方で藤枝明誠には205センチの 1 年生センター、#99 ボヌ ロードプリンス選手もいます。しかしチームの中心はけっして彼ではありません。ロードプリンス選手が日本に入国できたのはインターハイ・静岡県予選の終盤。当然、選手としては大会登録ができず、「雰囲気を味あわせるために、決勝戦はマネージャーとしてベンチ入りをさせました」と日下部コーチは言います。
「その県予選では、『藤枝明誠は留学生が入って強くなった』と言われたくなかったので、『留学生が来る前に優勝しよう』が合言葉でした。そこで頑張り切れたことも、今の彼らにとっては力になっていると思います。ですから私たちのバスケットは、留学生に合わせるバスケットではなく、日本の子どもたちがずっと作り続けてきたバスケットに留学生を入れるという考え方なんです」
 留学生がいると、どうしても彼らの高さ、強さで勝ち上がってきたのではないかと思われがちです。しかし、少なくとも藤枝明誠は赤間選手や霜越選手ら、それまでチームを築いてきた選手たちが中心になって、チームを作っていきました。そこにロードプリンス選手の高さが加わったことで、今大会でもステップアップをしているのです。

 前日に仙台大学附属明成 (宮城) を破り、きょうも北陸を破った藤枝明誠。ここまでの勝ち上がりについて、日下部コーチは言います。
「今もそうですけど、私たちは課題ばかりなんです。その課題に取り組みながら、ミーティングで子どもたちが選んだ言葉が『チャレンジ』でした。自分たちのまだまだできないことにチャレンジしながら、少しずつ勝ち上がって来たところです」
 明日は福岡第一との対戦になります。これもまた彼らにとっては大きなチャレンジでしょう。しかし自分たちのバスケットを迷いなく貫くことで得られるものはあるはずです。
 前回、インターハイのベスト 4 に入ったときは、翌日のファイナルにまで進んでいます (決勝戦では京北 (現・東洋大学京北) に敗北)。8 大会ぶりのファイナル、そしてまだ見ぬ夏の頂点へ。迷いなき藤枝明誠のチャレンジは明日も続きます。