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第32回オリンピック競技大会(2020/東京) 総括

2021年8月11日

史上初の銀メダルに輝いた5人制女子日本代表

その魅力を伝えることができた新種目3x3

 新種目として採用された3×3から幕を開けた東京2020オリンピック。最終日には5人制女子日本代表が史上初の銀メダルに輝き、8月8日にその熱戦が閉幕しました。5人制男女日本代表、3×3(3人制)男女日本代表の4カテゴリー全てに出場し、大会を終えた総括をご紹介します。

■三屋 裕子 JBA会長

非常事態宣言化の中での無観客となり、はじまる前はどのような形で開催されるか全く分からない状態でオリンピックに入りました。今、終わって言えることは、選手たちは持てる力を最大限発揮してくれました。4カテゴリー全ての選手に感謝したいと思っています。

3×3は男女とも決勝トーナメントに進出し、新種目ながらがんばってくれました。残念ながらその先に進むことはできませんでしたが、たくさんの方々から「3×3はおもしろい」「すごくスピーディーだ」など高い評価をいただきました。また、大会期間中にFIBAセントラルボードミーティングが開催され、その中でも3×3に対する評価と期待感が、世界的に広がりつつあることを見せたことが大きな収穫です。

課題点として、3×3男子日本代表は、Bリーグとアメリカの大学に通う富永啓生選手というチームでした。3×3とBリーグのシーズンが若干重なる時期があり、今後どうチームを組成するかが課題になってきます。

3×3女子日本代表は、唯一、金メダルを獲ったアメリカに土をつけたのは大快挙でした。Wリーグと3×3のシーズンはかぶらないので、今後も同じようなチーム構成になるかと思います。3×3はポイントランキング制であり、海外に転戦しなければポイントを取ることができない課題もあります。今後の強化をどうするかと、国内で3×3大会をJBAとしてどれだけ開催できるかが課題になります。アーバンスポーツの象徴として、今後も様々なところで活用しながら強化につなげたいと考えています。

5人制男子に歩代表は、残念ながら予選ラウンド敗退となりました。渡邊雄太選手も言っていましたが、2019年FIBAワールドカップと比較すれば質は上がっていたと感じています。多くの課題が見つかったとも思っています。今、Bリーグの島田慎二チェアマンとも話し、国内組の強化を今後リーグを開催しながらどう高めていくかを検討しはじめています。NBAの2人(渡邊選手と八村塁選手)とオーストラリアNBLの馬場雄大選手は高いレベルで揉まれ、磨かれていることは実感しています。それに対し、国内組をどう強化し、彼らのレベルに近づけていくかはかなりチャレンジングな課題ですが、取り組まなければいけないと感じています。

5人制女子日本代表は日本バスケ界にとって史上初メダル獲得、それも銀メダルに輝きました。今回、渡嘉敷来夢選手がケガで合流できませんでしたが、トム・ホーバスヘッドコーチをはじめとしたスタッフに関して本当にすごいと感じたのは、無い物ねだりをしないという点です。言い訳することなく、今ある戦力の中で最大限の結果を求めていく考え方に対して、非常にリスペクトしています。

大会までに良いときも悪いときもありましたが、一番良いピークでオリンピックを迎えることができたと思っています。リオオリンピックを経験した選手たちがチームをまとめてくれました。髙田真希選手、宮澤夕貴選手、長岡萌映子選手、町田瑠唯選手、三好南穂選手の5人の経験者が、東京オリンピックでもしっかりとチームをまとめてくれたことが大きかったです。今回、東京オリンピックを経験した選手たちや、若手がどう伸びていくかに関しては、Wリーグと相談していかなければいけないところです。リーグの改革も進めていかなければいけないとも思っていますが、しっかりと強化を見据えながらWリーグと話をしていきたいです。

4カテゴリーを終えてみて、我々のスローガンである「バスケで日本を元気に」ということが、少し日本を元気にできたのではないかと感じています。今後もバスケを通じて、様々な方を元気にすることが我々の使命です。また、子どもたちの身体を動かすきっかけにこのオリンピックがなったのであれば、バスケを広げていくかも我々に科された課題です。

選手たちが一生懸命がんばって残した結果を、JBAがどうつないでいくかが重要です。選手からものすごく熱いバトンを受け取ったと思っています。このバトンをしっかりと47都道府県の協会の方々と気持ちを一つにして、バスケ界の価値向上に努めて参ります。

■東野 智弥 技術委員長

東京オリンピックを通して、日本バスケが世界のどの位置にいるのか、また目標に掲げた到達点を世界にどう示すかという機会になりました。日本の皆さんにバスケットの醍醐味や迫力などを、最高の舞台で見せられるのではないかという期待とともに、4カテゴリー全てが東京オリンピックに出場することができ、その責任と誇りを胸に世界と戦ってくれました。結果と強化という視点で総括していきます。

【3×3女子日本代表】
オリンピック最終予選を突破し、実力のあるチームでした。東京オリンピックから新種目として採用され、3×3女子日本代表がメダルを獲得して欲しいというのが、我々の思いでした。残念ながら、そこには届きませんでした。
60連勝中だったアメリカを撃破したのは世界を驚かせました。女子のバスケが世界に対して、どのように強みを発揮すれば良いかを体現してくれました。3ポイントシュート、素速さ、賢さ、切り替えの速さ。暑熱順化の30度を超える暑さの中でも、最後まで戦い続けたこのチームは尊敬に値します。準々決勝ではフランスに14-16で敗れ、1ゴール差に泣いたわけですが、そこには何かが足りず、パリオリンピックへ向けた宿題になりました。金メダルは夢物語ではないという活躍を見せてくれました。馬瓜ステファニー選手が流した涙が、次への出発点だったと思っています。

【3×3男子日本代表】
ホスト国として出場しました。予選で勝てるのかと言われながらも、セルビア戦以外のゲームで競争力を見せて、最下位からドラマチックな展開で決勝トーナメント進出を決めました。準々決勝では、金メダルを獲ったラトビアに対して18-21で敗れましたが、もう一本シュートが入っていれば延長にもつれ込むこともできました。このような試合ができ、私も感動しましたし、皆さんの心をつかんだ戦いはできたと思います。
今後は、Bリーグとの連携や3×3をどう日本で発展し、活性化させていくかが課題です。パリ、ロサンゼルス、オーストラリアで開催されるオリンピックでも正式種目として採用されます。しっかりと構造を作りつつ強化を進めていきたいです。特徴として、海外の大会に出場してポイントを獲らなければいけないですし、または海外のチームが参加する国内大会を作っていかなければなりません。富永選手の2ポイントシュート力は本当に見事であり、彼らの成長を見守りつつ、5人制と3人制のバランス、そして融合を考えていきたいです。

【5人制男子日本代表】
結果だけ見れば3連敗、FIBAワールドカップを合わせて8連敗となりましたが、今回の敗戦は2年前とは質が違うと思っています。ファイナルに進んだフランスに、強化試合では勝つことができました。オリンピックでの対戦国は、いずれも日本を甘く見ることなく、世界のトップチームが本気で戦いを挑んできました。それに対し、まだまだ足りない部分があったのはその通りです。コロナで1年延期したことで、チームとして成長することもできました。
大会後、フリオ・ラマスヘッドコーチは私に「彼らを勝たせられなくて悪かった」と言いました。ラマスヘッドコーチとしっかり歩んで来たことを実感し、アルゼンチンに勝とう、そこに勝てばベスト8につながるところまで進めてくれました。
男子はまだまだ成長を続けます。Bリーグの成長も躍進の助けになり、NBAの2人と馬場選手も世界にチャレンジし続けています。世界のトッププレーヤーと比較すれば、まだまだ成長しなければなりません。

【5人制女子日本代表】
準々決勝ベルギー戦での、最後の林咲希選手はしびれました。このチームは1年延期したことで何人かのケガ人も出て、非常に厳しい状況であり、一番心配していました。渡嘉敷選手がケガし、間に合わないとなりましたが、ホーバスヘッドコーチが戦術的、戦略的に素晴らしい活路を見出してくれました。リオオリンピックではベスト8の壁を破って、決勝トーナメント進出を果たしましたが、今回は最終日の女子決勝の舞台でアメリカと対戦し、互角に渡り合うことができました。それはやはり、リオオリンピックを終えたあとから、東京オリンピックでは閉会式の前に試合をし、そしてアメリカに勝って金メダルを獲るという目標を掲げたホーバスヘッドコーチに任せ、彼自身がチームを引っ張り、見ている皆さんに感動を与えてくれました。「スーパースターはいないけどスーパーチームだ」という形にしてくれたことを本当に感謝します。日本バスケ界の歴史を変える偉業を達成しただけではなく、女子バスケが変わったことをしっかり見せてくれました。
この銀メダルのメッセージは、日本バスケに勇気を与えてくれました。この女子バスケを作った育成やアンダーカテゴリーのコーチたちの努力の結集が、一気通貫して実った成功例だったと思います。
女子日本代表に続く、女子U19日本代表がFIBA 女子U19ワールドカップを戦っていますが、次から次へと良い選手が現れており、チームスポーツが勝つための良い流れを継続して作っていかなければいけないと思っています。
戦術面では、ディフェンスは献身的に40分間攻め続けてがんばってくれました。また、大きな特徴として、3ポイントシュートです。38.4%(73/190本)は今大会トップの成功率を誇ります。しっかりと3ポイントシュートと2ポイントシュートをどう打つかという部分を明確化させました。5OUTというオフェンスをベースに、相手の大きな選手がついて来られないように、そして中に切れ込む速さやボールの動きを実現してくれたことは、男女関係なく見本になるバスケットを展開してくれました。他国からも、日本のバスケに感動したという話も多く聞かれました。女子日本代表が火をつけた部分を、みんなが追いつけ追い越せ出切磋琢磨して、次に向かわなければなりません。そして、忘れ物である金メダルにしっかり向かって、パリオリンピックやそれ以降も継続して目標にしていきたいです。

日本バスケ界がFIBAから制裁を受け、そして解除されてから6年が経ちました。三屋会長のご尽力もあり、良い形で進めてきました。強化はチェンジできるチャンスに、チャレンジができるかどうかでした。まさに、女子日本代表の銀メダル獲得により、それを示してくれました。今後も、オリンピックを基準に4年間サイクルでPDCAを回し、発掘・普及・育成・強化・養成を検証しながら改善し、パリオリンピックへ向かっていきます。選手が見せたパフォーマンスや結果、そして笑顔は忘れることができません。

3×3の活躍も5人制のチャレンジも、女子日本代表の銀メダルに乗せて、次への旅に向かっていきます。45年ぶりに出た男子日本代表は、これからも坂を上って行きます。新たな3×3は、47都道府県で普及させていきます。8月24日(火)から、バスケットファミリーの男女車いす日本代表がパラリンピックでまた旋風を起こしてくれると期待しています。

パリオリンピックまで1080日の旅をまたはじめたいです。