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「2023年度JBA女性コーチカンファレンス」開催報告

2024年3月8日

ワークショップではコーチ同士のつながりも増えた

2019年度以来の集合形式での開催。女性43名、男性14名が参加。

 JBAでは、去る2024年2月11日(日)に「2023年度JBA女性コーチカンファレンス」を開催しました。

 2023年度は、「コーチになりたい女子・女性アスリートを増やすために、コーチにできることを考えよう」というテーマを設定し、未来のコーチ候補である女子・女性プレーヤーが、どうしたらコーチになりたいと思うようになるのか、身近なロールモデルであるコーチができることを考えました。 

<第1部> 講演「コーチがセカンドキャリアの選択肢になるために、コーチにできること」
 第1部では、トヨタ自動車アンテロープスヘッドコーチの大神雄子氏による講演を行いました。トップアスリートとして活躍し、引退後もコーチとして競技に関わり続ける大神氏により、コーチになったきっかけやキャリア移行に関する歩みについてお話がありました。自身がコーチになったきっかけについては、「選手から役割が変わった」と表現されており、指導を受けたコーチの影響や、周囲の環境もあり、引退後にコーチになることは自然な流れであったとお話がありました。コーチという職業が、選手引退後の選択肢となるために必要な働きかけについて、ご自身が考えるコーチの責任との関係を示しながらお話がありました。例えば、コーチの責任の1つとして挙げられていた「選手やスタッフとのコミュニケーション」では、選手のうちからコミュニケーション能力を高めることが必要であり、そのために行なっている「リーダーズ」という取り組みや「30秒スピーチ」について紹介がありました。
 また「チームの成長と自己形成への教育」もコーチの責任の1つとして捉えており、競技に関する成長以外に、指導する選手の人としての成長に関するゴールを設定し、その達成に導くこともコーチの責任であるというお話がありました。それにより、選手が自身の持っている可能性に気づくことにつながり、コーチを目指すことにもつながるのではないかという示唆がありました。

<第2部>パネルディスカッション「女子・女性プレーヤーのセカンドキャリアに影響を及ぼす、コーチからの働きかけ」
 第2部では、大神氏のほかに早川拓氏(埼玉県立久喜高等学校女子バスケットボール部ヘッドコーチ)、野口まゆみ氏(札幌緑丘ミニバスケットボール少年団コーチ)の2名も加わり、「女子・女性プレーヤーのセカンドキャリアに影響を及ぼす、コーチからの働きかけ」というテーマでパネルディスカッションが行われました。
 「コーチとしてのキャリアを形成する上で、これまで教えてもらったコーチからどんな影響を受けたか?」という質問では、それぞれが自身の経験を紹介しました。野口氏は、ミニバス時代に受けたコーチングによってネガティブな経験をしたが、その後に出会った高校、大学のコーチのおかげでバスケットボールに関わり続けることができたことを踏まえ、競技生活を送る上でも、その後のキャリアを考える上でもコーチの影響は大きいと語りました。大神氏からは「コーチ」の語源となった「人を目的地に運ぶ」という意味を踏まえ、競技力を上げるだけでなく、人間性やキャリアに関するゴールにプレーヤーを導くこともコーチの役割であると改めてお話されました。
 「プレーヤーのキャリア形成のために行なっている取り組み」に関する質問では、早川氏よりチーム内で行なっている取り組みについて紹介がありました。早川氏は、競技以外にも様々なことに興味を持つ高校生を世の中に送り出したいという思いで、3×3に取り組んだり、地域のボランティアに積極的に参加したりといった取り組みを行っています。その他にも、メンタルコーチやトレーナーと関わる機会を提供することで、コーチだけでなくトレーナーや栄養士など、バスケットボールに関わる様々な方法・職業があることを知ってもらいたいと話していました。早川氏の勤務する学校は県立でありますが、私立でなくてもできるんだ、という思いで取り組んでいるといいます。
 参加者からの質問にて、「選手がコーチになりたいと思えるようなチームづくりのために、チームでやっていることや、コーチの労働環境を改善するために必要だと思うこと」が挙がると、大神氏はボスとリーダーの違いを挙げ、ボスではなくリーダーとして選手と向き合いたいと語りました。また、野口氏は、バスケを一生好きになってくれる環境づくりが必要であるが、北海道にはチームが少ないことが課題であると話し、その解決のために女子のクラブチームを設立し、一貫指導の場やコーチやスタッフとして働く場所をつくりたいという展望を話してくれました。

<第3部>ワークショップ「女子・女性プレーヤーがコーチに興味を持つことができるように、コーチにできることを考えよう」
 第3部では5名程度のグループに分かれ、グループワークを行いました。参加者の皆さんには、本カンファレンスに参加するにあたり、「指導する選手や身の回りの選手にヒアリングし、将来コーチになりたいと思っている選手の数やその理由について把握する」という事前ワークに取り組んでもらいました。まずはその結果をグループ内で共有し、その中から、コーチになりたい/なりたくないと思う理由のうち、コーチが関連して起こる要因をピックアップしました。その上で、コーチになりたいと思うポジティブな理由を増やしたり、コーチになりたくないと思うネガティブな理由を減らすために、コーチにできそうな働きかけについてグループ内で話し合いました。

<全体を通して>
 参加者の皆さんから「早川先生のお話を伺い、バスケの指導だけではなく、街との連携などバスケで日本を元気にするお話だなと感じました。今、教えている子どもたちがコーチだけではなく幅広くバスケに関わることができたら嬉しいなと思いました。」「コーチというのは教えるだけではなく、将来の子どもたちのバスケットを続けるための選択肢になると学んだ。」といった感想が寄せられました。バスケをプレーするだけではなく、コーチをはじめとして様々な関わり方があり、長く競技に関わる人材を増やすためにコーチは最も身近なロールモデルとなりうる、という気づきに繋がったカンファレンスとなったことがうかがえました。