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FIBA U19 ワールドカップ 2021:「チームに求められるならば、どんなプレーでもして勝ちたい」山ノ内勇登選手

2021年7月8日

男子日本代表の渡邊雄太選手と同じマインドでベンチでもチームを盛り上げるハーパー ローレンス Jr選手

チームの勝利を第一に考え、フィットしはじめた山ノ内勇登選手

 「FIBA U19バスケットボール ワールドカップ2021(以下U19ワールドカップ)」でのROUND OF 16を終え、男子U19日本代表は決勝トーナメントへの進出は果たせませんでした。FIBAユースランキング7位、3連勝でグループA1位のセルビアを相手に、同27位であり、3連敗中の男子U19日本代表が86-89と惜しくも3点差で敗れたROUND OF 16は善戦したと言えます。強豪を相手に良い経験ができ、少なくとも自信をつける戦いぶりでした。しかし、このチームは世界を相手にまず1勝を挙げ、成功体験を得ることを目標として今大会に挑んでいます。

 ROUND OF 16において、日本と同じグループAから3チームが8強入りし、それだけタフな予選ラウンドでした。佐古賢一ヘッドコーチは、「初戦のセネガルからどのチームもサイズがあり、その大きさに対してなかなかファイトすることができませんでした」と振り返ります。3戦目となった前日のリトアニア戦は、試合中から檄が飛ぶ消極的なプレーが見られ、63-95で完敗。序盤からリードを奪われ、一方的な展開となったことで選手たちにも焦ってしまいました。試合が終わった選手たちは気持ちを切り替え、すぐさま冷静に反省点を見つめ直します。試合当日朝のミーティングまでに、前田浩行アシスタントコーチとテクニカルスタッフの中川 拳コーチが夜通しでセルビアを分析し、絞り込んだ情報を与えたことで選手たちのやるべきことが明確になりました。

 そのプレー面に加え、佐古ヘッドコーチは「とにかく自分たちが今できることを精一杯やること。それが一番大事」と伝え、今大会を通じて将来につながる成果をひとつでも持って変えることができるように発破をかけます。特にこのチームは大会前に試合ができず、コロナ禍の影響もあって山ノ内 勇登選手 (リベットアカデミー)が合流したのも、開催地のセルビアに入った大会3日前のことでした。選手たちにとっては、勝てない原因に対していろんな言い訳ができる部分もあります。しかし、佐古ヘッドコーチは「まず1勝」というぶれることない目の前の目標に向かい、選手同士でも活発にコミュニケーションを取って問題解決をしていったことで、「チームとして戦えるようになり、これまで取り組んできたことがようやく形になってきました」と手応えを感じはじめています。だからこそ、「本当に勝たせてあげたかった」というほど、悔しいセルビア戦でした。

 セルビア戦に向けて、「ディフェンスでしっかりとコミュニケーションを取り合おう」とチームをまとめ、試合に臨んだのはポイントガードのハーパー ローレンス Jr選手 (東海大学1年)です。体を張ったディフェンスとファウルは紙一重であり、この試合も先発出場したハーパー選手は開始4分で早くも2つ目のファウルとなり、ベンチに下がります。「常にチームメイトのモチベーションを上げることを意識しています」というハーパー選手はベンチから声をかけ、立ち上がってチームを鼓舞し、集中を切らすことなく戦い続けた好プレーを見せます。それは、同時間帯に行われていた「日本生命カップ2021 バスケットボール男子日本代表国際強化試合」で見せた渡邊雄太キャプテン(トロント・ラプターズ)と重なる姿でした。

 試合ごとに成長し、チームとして息が合ってきたと手応えを感じるハーパー選手。「世界の強豪と対戦し、高さの違いなどに対して、自分たちがどのようなオフェンスやディフェンスをすれば良いかいろいろ頭が使うことが増えています。そこをチームでしっかり話し合って解決し、これからも勝利を目指していきます」と前を向き、チームを引っ張ります。

 セネガルとの初戦で退場となり、その後もファウルトラブルに苦しむ山ノ内選手にとって初のFIBA大会は苦戦を強いられています。「アメリカでは同じプレーでもファウルは取られませんが、FIBAルールでは少しのコンタクトでも笛を吹かれてしまい、そこにアジャストするのが難しかったです」という山ノ内選手ですが、4試合目のセルビア戦は3ファウルで耐え、「ようやく慣れてきたことで自分でも成長したと感じています」

 山ノ内選手は合流する1ヶ月ほど前にケガをし、ワークアウトを再開したばかりでしたが、なんとかコンディションを上げて間に合わせることができました。しかし、チームのスタイルに馴染むには3日間の準備期間ではとても足りません。それでも佐古ヘッドコーチはその可能性に懸け、何よりもひたむきにがんばる姿を見て、彼を信じて起用し続けています。ファウルトラブルによりプレータイムを自ら減らしてしまった状況を悔やみながらも、「しっかりと張り合えた部分はありました」と自信を見せます。チームにも慣れてきたことで、さらなる活躍が期待される山ノ内選手ですが、「自分のことよりも、まずはチームの勝利を一番に考えてプレーしています。チームに求められるならば、どんなプレーでもして勝ちたいです」と話しており、チーム一丸となってまず1勝を目指すだけです。

 次戦は7月9日(金)深夜2:30に、グループD 2位のトルコと対戦。ROUND OF 16では、初戦でスペインに勝利して勢いに乗るアルゼンチンに74-76で惜敗し、9-16位決定戦にまわりました。予選ラウンドではアメリカとも対戦。オーストラリアには64-62で勝っており、新たなる世界の強豪との戦いが待っています。

■予選ラウンド 最終結果
[グループA]
1位:カナダ(3勝)
2位:リトアニア(2勝1敗)
3位:セネガル(1勝2敗)
4位:日本(3敗)

[グループB]
1位:セルビア(3勝)
2位:ラトビア(1勝2敗)
3位:イラン(1勝2敗)
4位:プエルトリコ(1勝2敗)

[グループC]
1位:フランス(2勝1敗)
2位:スペイン(2勝1敗)
3位:アルゼンチン(2勝1敗)
4位:韓国(3敗)

[グループD]
1位:アメリカ(3勝)
2位:トルコ(2勝1敗)
3位:オーストラリア(1勝2敗)
4位:マリ(3敗)

■Round of 16 試合結果
カナダ(A1位) 86-56 プエルトリコ(B4位)
スペイン(C2位)86-73 オーストラリア(D3位)
セネガル(A3位)57-44 ラトビア(B2位)
アメリカ(D1位) 132-60 韓国(C4位)
リトアニア(A2位)96-53 イラン(B3位)
フランス(C1位)86-52 マリ(D4位)
セルビア(B1位)89-86 日本(A4位)
アルゼンチン(C3位)76-74 トルコ(D2位)